さよなら、ナナシのバイオリン /うめーち 【漫画感想】

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<登場人物>

 (攻)Vn-Ga 2567…Ga。人型名持ちバイオリン。自分の名前を知らない。

 (受)音無奏介(おとなし そうすけ)…音大2年。バイオリン科。


<あらすじ>

 名前を付けたモノに命が宿り、生物の形が授けられる世界。音大に通う奏介は「名持ち」楽器は使わない主義だったものの、事故で自分のナナシ楽器が壊れてしまいやむなく人型バイオリンを購入。しかしバイオリンは思ったような音が出ず、悩んだバイオリンがスキンシップを図ろうと奏介との距離を縮めてきます。


<感想>

 こんな傑作を今まで見逃していたなんて……。読めて本当によかったです。

 モノに名前を付けると蛇やウサギなどの生物になる不思議な世界でのお話で、中には人型をとり本物の人間と同様に触れ合えるモノも存在しています。家族のような愛着が湧く一方で、壊れたり手放したりするときにはかなりの痛みが伴う、なかなかに過酷な世界観な印象です。

 攻のバイオリン(通称Ga)は、名持ちの人型であるにもかかわらず、自分の名前がわからない訳あり楽器。名持ちを頑なに拒否する奏介さんへのアタックが健気なのに笑ってしまうものばかりでかわいいです。あとバイオリンが攻というのが最高に萌えます。奏介さんが自ら受になる過程もとても彼らしい理屈で笑いました。

 Gaにも奏介さんにも悲しい過去があり、それが繋がっていく展開は涙を誘う……と同時に笑わずにはいられない事実が明かされたりして、感動の涙を浮かべながらつい笑ってしまうという珍しい体験をしました。子供の奏介が水に落ちてしまったとき、もったんが奏介を守っているように見えるのが思い出すだけで胸を締め付けられるのですが、まさかそんな本名だったなんて。

 最後の描き下ろしもいいお話でした。本編でかなりいいアクセントになっていた長谷川さんとコスモくん。彼らにも彼らなりの信頼関係があるとわかって感激しました。タイトルが「Coda」なのも素敵。そういえば作中に楽譜や音符ってほとんど出てこなかった気がするのですが、壮大で感動的な1曲を聞かせてもらったような不思議な読後感です。脳内スタンディングオベーションが止みません。


<オススメ>

・名前のわからないバイオリン×名持ちは使わない音大生。


<関連作品>

・電子書籍(お試し読みができます。)

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