＜登場人物＞
（攻）（受）芦田翔（あしだ かける）…ダイニングバーで働いている。バイ。
（攻）（受）辻翔真（つじ しょうま）…大学生。世話焼き。
＜あらすじ＞
貧乏大学生の翔真はその世話焼きな性格からゴミ捨て場に倒れていた男を放っておけず、自宅に連れ帰って介抱します。偶然にもその男は、翔真の中学の同級生・芦田でした。
恋人と別れてきたという芦田に同情し一晩泊めたものの、芦田に軽く手を出されてしまった翔真。しかもその後住むところがなくなったという芦田に押し切られ、しばらく同居することになります。
＜感想＞
副題（？）というのでしょうか、タイトルの上に「To dear my sorrow」とあるのがなんだかとてもいいな、と思いました。「かなし」と読ませるタイトルについて、この副題との相乗効果でなんとなく意味が伝わってくるような気がします。
帯に「ＢＬ史上最高のリバ、誕生」とある通り、芦田と翔真にはリバ展開があります。最初だけ翔真×芦田で、その後は芦田×翔真で固定かな、と思われます。翔真が攻のときは芦田が乗っかってくる感じなので、私はそれほどリバっぽさは感じずに読めました。リバに関しては特別苦手とか好きとかはないんですが、鮮やかな逆転劇というよりは、ふたりの関係を進める上での自然な流れに見えました。
お話については、はじめは久しぶりに会った同級生の芦田がプレイボーイになっていて、世話焼きの翔真が翻弄されています。このまま芦田が本気になって翔真を口説いていくのかな、という流れを予想していたら、翔真の気持ちが思わぬ方向に転がっていったのでびっくりしました。すごくお人よしで流されやすそうなのに、静かに男らしい告白をしてきた翔真に心奪われてしまいました。
難しいこととわかっていながら、騒がず諦めず自分の気持ちと向き合う翔真が健気過ぎます。翔真の大学の友人達と一緒に、私もひたすら応援したくなりました。
それに対していろいろこじらせている芦田が逃げ腰になってしまうのも、それはそれでわかる気がします。自分から手を出しておいて翔真の気持ちに応えない芦田については読む人を選びそうな印象ですが、翔真の想いと彼自身がまっすぐ過ぎて自分が一緒にいていいのかという考えは理解できなくもなかったです。
とにかく翔真が本当にいい人で、大好きになりました。最終話にあたる第５話は芦田のセリフで締められるんですが、それにひたすら頷くしかありませんでした。
最後に、紙本カバー下には芦田と翔真の初期ラフと、先生のあとがき漫画が掲載されていました。芦田は最初は受のみの予定だったようなのですが、それがどうして本編の流れに至ったのかが紹介されています。先生と担当さんの打ち合わせ内容がおもしろかったです。
＜オススメ要素＞
・好きにならずにはいられない健気受。
＜関連作品＞
・電子書籍（お試し読みができます。）
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