人魚姫の真珠 ~海に誓う婚礼~ 華藤えれな(著)/北沢きょう(イラスト) 【小説感想】

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<登場人物>

 (攻)ウイリアム・チチェスター・オブ・オドンネル…リアム。アイルランドの若い侯爵。

 (受)水凪(みなぎ)…アイルランド名・ウィスカ。日本とアイルランドのハーフ。母親が神子だった。19歳。


<あらすじ>

 アイルランドで脈々と続いてきた侯爵家のリアムは、大学を卒業し家の事業に関わるため、ブルーパールを養殖している離島にやってきます。そこで人魚の子孫とされる水凪と出会いますが、水凪は父親がよそ者であることを理由に酷い扱いを受けていました。


<感想>

 海を自由に泳ぎ回れる人魚と、現代を生きる侯爵様のメルヘンチックなお話でした。

 水凪は人魚の末裔の家に生まれ、海にずっと潜っていられたり、海の神と話し天候を予知できたりと「神子」としての力があります。しかし父親はよそ者の日本人、母親も今はおらず、根深く古い因習が残っている島ではやっかい者扱いです。

 この島での水凪の境遇がもう本当に不憫で……。教育は受けられず、一部の島民からは娼婦のような真似を強いられています(モブ姦シーンありです)。幸いにも(?)はじめの方は水凪自身が悲惨さを理解しておらず、また自分の運命を諦めたような気持ちで受け入れているためか、事態は淡々と語られます。リアムと視点が切り替わるのもあり、私の場合は状況のひどさに気持ちをひきずられることはなく、ストーリーを追うのに支障はありませんでした。

 リアム視点といえば、リアムから見た水凪の描写がすごくよかったです。嫉妬から水凪を無理やり抱いてしまうシーンがあるのですが、貝殻をつけ真珠で縛られた水凪が本当に打ちあげられた人魚みたいで。魚のごとくピチピチと悶える様子が頭に浮かびニマニマしてしまいました。

 健気に一生懸命生きていれば、どんなに誤解されていても人格者の王子様が真実を見出し愛してくれるかもしれない、そんな希望を抱ける童話の空気漂うお話でした。次から次へと襲う悲劇に耐え抜き、彼らがたどり着いた場所の情景は幻想的で大変美しかったです。

 つらいことがあっても所詮は神様の試練で、すべてが終わったあとはハッピーエンドが待っている……メロドラマのような感傷を追体験でき、最後はとてもすっきりとした気持ちになれました。人魚姫が救われるってやっぱり素敵です。


<オススメ要素>

・溺愛系若侯爵×不憫で健気な人魚の末裔。


<関連作品>

・電子書籍(お試し読みができます。)

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・コミカライズ


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