オメガ 愛の暴君 華藤えれな(著)/駒城ミチヲ(イラスト) 【小説感想】
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<登場人物>
(攻)クロード…アルファ。パリのマフィア。元はルーシ帝国の陸軍将校。
(受)希来(キラ)…オメガ。ルーシ帝国の皇子として生まれたものの、オメガであることを理由に亡くなったことにされ、修道院で育った。
<あらすじ>
アルファの貴族を中心に栄えていたルーシ帝国は、ベータ達が起こした革命によって消失してしまいます。パリへと逃げ伸びた帝国陸軍将校クロードは、そこでマフィアとして頭角を現しルーシの亡命貴族達の面倒を見ています。
ルーシの法では「財産を相続できるのは、オメガである皇子が生んだ子供だけ」とされており、革命の数年後、クロードは財産目当ての貴族に「希来を探してほしい」と依頼されます。
<感想>
華藤えれな先生があとがきでおっしゃっている通り、ルーシ帝国とは約100年前のとある国を連想させます。白夜だったりどこまでも広がる草原だったり、風景描写が大変美しく、行ったことのない私まで情景が目に浮かぶようです。
貴族社会の規律だけでなくオメガバース特有の概念が加わり、皇子として生まれた希来はオメガであるというだけで死亡したことにされ、その事実を知らないまま幽閉されるようにして修道院で暮らしています。クロードが希来を発見したときには修道院には彼ひとりしかいなかったというのが悲惨です。
後にわかることですが、希来にとっては奇跡的なタイミングで現れたクロード。純真無垢な希来はあっという間に恋に落ちます。
元軍人であるクロードは自分の色恋沙汰には鈍いところがあり、希来に対してとても皇族にするものとは思えない上からな態度を取り続けます。ですが読者側から見れば、惹かれあっているのは手に取るようにわかります。受攻両方の視点で語られるので、そのあたりに関しては安心して読めます。
ですが希来は皇族の親戚のつがいになる運命。希来もクロードもそこはきっぱりと受け入れていて、でもせめて希来が嫁ぐそのときまでは、と情熱的に愛を交わしています。希来が自分の役目をやり遂げたら、とクロードと将来の約束をする場面が美しくも切ないです。
純真で弱々しい印象だった希来が強く逞しく生きていく姿はとても眩しく、血にまみれながらも希来を守ろうとするクロードは凛々しいです。
そして出生や時代に翻弄されながらもふたりが運命を切り開いていく様を見届けた後は、まるで絵画のような素敵な場所でのプロポーズが待っていました。血なまぐさい修羅場の後なのに、心が洗われるようなシーンでした。
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