恋せよ千年ニート /瑞原ザクロ 【漫画感想】

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<登場人物>

 (攻)浦島太郎(うらしま たろう)…あの浦島太郎。乙姫のヒモ。肉体年齢は26~28歳。

 (受)常陸隼人(ひたち はやと)…ブラック企業勤めのサラリーマン。25歳。


 (攻)竜彦(たつひこ)…乙姫の異母弟。タツノオトシゴの化身。

 (受)亀安(かめやす)…浦島に助けられた亀。浦島に片想いしている。



<あらすじ>

 ブラック企業勤めでボロボロの隼人は、浜辺で突然の大波に巻き込まれ、溺れてしまいます。諦めかけたところを浦島に助けられ、龍宮城で保護されることに。
 隼人を助けてくれたのはおとぎ話にでてくるあの浦島太郎でしたが、浦島は千年以上も龍宮城で乙姫のヒモをしていました。隼人は自分の意志で陸に戻ろうとしますが、乙姫から仕事運アップと引き換えに浦島を一緒に連れ帰って欲しいと頼まれます。


<感想>

 隼人は海で溺れたところを助けられ、目が覚めるとそこは龍宮城。しかも助けてくれたのはあの浦島太郎でした。浦島はおとぎ話では陸へ帰っていましたが、現実では千年以上も龍宮城に居座り乙姫のヒモをしているというのです。

 浦島を陸へ帰したいものの、いきなり俗世間へ放り込んだのではやっていけないだろうと考えていた乙姫は、隼人に一緒に連れて行ってほしいと頼みます。そのかわり隼人の仕事運を上げてくれるというので、ブラック企業勤めの隼人は即承諾。陸へは帰りたくない浦島との攻防が始まります。

 陸へ帰るのを嫌がる浦島は、もとは貧しい村の漁師だったそうです。時代は違えど少し隼人と共通する部分があり、ちょっと切なくなりました。そういえば隼人自身も、溺れかけたときに「ここで死ねば明日は会社に行かなくていいんだ……」と安堵すら覚えたというシーンがあり、そのあたりの描写は心にグサグサきました。私ももしこんな龍宮城に行けたら帰ってこないだろうな、と思います(でもBL本が読めなかったら泣きながら帰ります)。

 その後浦島への説得が済む前に隼人の身が危うくなり、その場の突発的な流れでふたりは陸へ帰還。ですがそこでめでたしめでたし、とはならず、浦島は少しずつゆっくり陸の暮らしに適応していく、というのが妙に現実的でした。そういうところをファンタジーで押し切らず、自然な流れの中で見せてくれたのは良い意味で予想を裏切られ、とても良かったです。

 隼人と浦島の攻防の最中、裏ではタツノオトシゴの化身である竜彦と浦島に片想い中の亀安のお話も同時進行しています。このふたりは作中では攻受がはっきりするところまでいかなかったんですが、帯によると竜彦×亀安のようです。タツノオトシゴの生態が大変興味深いもので、それを活かして亀安を落とそうとする竜彦がおもしろかったです。

 おとぎ話の雰囲気と現代社会が絶妙にマッチした、いいお話でした。


<オススメ要素>

・千年ニートが陸復帰するまでのお話。
・タツノオトシゴの生態。


<関連作品>

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