肌にひそむ蝶 秀香穂里(著)/嵩梨ナオト(イラスト) 【小説感想】

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<登場人物>

 (攻)高樹雄司…ニューヨークを拠点に活動する画家。36歳。

 (受)飯田邦彦…大手都市銀行渉外課に勤務。28歳。


<あらすじ>

 銀行員の邦彦は、自分の本当の性思考を隠しながら仕事でもプライベートでも鬱屈とした毎日を送っていましたが、ある日行きつけの喫茶店で画家の高樹と知り合います。
 高樹は邦彦が男に興味があることを一目で見抜き、さらには邦彦の肌が気に入ったといって強引に邦彦を家に誘います。


<感想>

 2006年7月号増刊の小説Chara vol.14に掲載された「肌にひそむ蝶」と、書き下ろしの「愛にひそむ蝶」の2つの中編が収録されています。インパクトのある表紙から勝手にダークな雰囲気を想像していましたが、タトゥーを入れる背徳感というよりは、蝶が飛び立つような爽やかなお話だったと思います。

 ゲイであることを必死に隠し、婚約までしている邦彦は、抑圧された息苦しい日々を送っています。そんな彼が高樹に出会い、見えない場所とはいえ蝶のタトゥーを入れる決意をしたときは、一応銀行に勤めている社会人だし大丈夫なのかしらと心配になりました。

 ですがいざタトゥーを入れるとなると、辛いのを我慢してでも高樹に続けてほしいとねだる邦彦に激しく萌えてしまう始末です。余計な心配をしてごめんなさい、でもありがとうございます、もっと見たかったです。

 全体としては抑圧された毎日からの鮮やかな脱却を描いたお話で、そうとわかればとても読みやすかったです。高樹が強引なわりにいい人だったので安心しました。

 繰り返しになりますが、高樹が邦彦に蝶のタトゥーを入れるシーンが本当によかった。こういう、両者合意のもとで、でも受が必死に耐えてるシーンが大好きなんだと改めて自覚させられた作品でした。



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