正体不明の紳士と歌姫 水原とほる(著)/yoco(イラスト) 【小説感想】

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<登場人物>

 (攻)田之倉侑吾(たのくら ゆうご)…祖父がスコットランド人のクォーター。31歳。

 (受)二宮由希(にのみや よしき)…会社員。合唱団に所属。33歳。


<あらすじ>

 顔はいいのに会社では地味で退屈なイメージをもたれている由希は、合唱団に所属し仕事の後は練習に通っています。
 由希が区民会館で練習していると、突然タキシード姿で現れ、歌を聞いていった田之倉。入団希望者かと思った由希が声をかけると、田之倉は由希の歌声を聴きにきているといいます。その後も田之倉は合唱団の見学に訪れ、練習帰りの由希を食事に誘います。


<感想>

 冬の訪れからクリスマスにかけての時期のお話だったので、とてもいいタイミングで読めました。紳士な仕草が身についている侑吾が、由希のマフラーを寒くないようになおしてくれるシーンがとても印象的でした。

 お話はタイトルがそのものズバリという感じです。顔は社内一とまで言われているのに周囲からは「退屈そう」と言われ恋人づくりに踏み出せない由希と、偶然耳にした由希の歌声に癒されたという謎の紳士・侑吾。由希には侑吾の正体はうっすらとしか知らされないままの状態が続くものの、ふたりが穏やかに恋心を育む様子が丁寧に描かれていました。

 由樹の前では職業をずっとはぐらかし続ける侑吾。侑吾の人柄からなんとなく想像はつきますが、はっきりするまではちょっと不穏な陰がチラつくだけでヒヤヒヤさせられました。

 中盤で非常に甘い一夜を過ごしたふたり。声のきれいな受といわれると俄然絡みシーンに期待が高まりますが、侑吾が好きなのは由希の声だけではなかったようで。しっとり美しい描写に由希はさぞかしいい声を上げているんだろうと妄想を掻きたてられます。

 そして朝になってからの闖入者たちはキャラが濃くて楽しい人たちでした。てっきり交際を反対されると思っていたのに、侑吾の会社の弁護士と秘書に入れ替わり立ち代わりで外堀を埋められていく由希……諸住さんも水森さんも本当はすごく応援してくれてるんじゃないかと想像してしまいます。

 やんちゃを隠し持った年下攻と、地味だけど意外としっかりしている年上受。大人の恋愛模様を楽しめる、今の季節にぴったりの穏やかでいいお話でした。


<オススメ要素>

・年下×年上。
・大人の真面目な恋愛。


<関連作品>

・電子書籍

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