旭光に抱かれて眠れ 水原とほる(著)/兼守美行(イラスト)

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<登場人物>

 (攻)旭匡尚(あさひ ただなお)…総務大臣の私設秘書兼SPだったが、秋元にスカウトされる。33歳。

 (受)秋元菊雄(あきもと きくお)…陸自の特殊任務隊に所属し、優秀な人材を探すスカウトマン。35歳。


<あらすじ>

 秋元はかつて国の特殊任務をこなす部隊に所属していましたが、事故により左足を負傷。その後は実任務を退き、極秘部隊で活動できる優秀な人材をスカウトしています。
 そんな秋元の目に留まった5人目の候補者・旭。秋元が接触を試みると、旭は入隊の条件として、秋元を抱いてみたいと言い出します。


<感想>

 平和な国、日本では「存在していないことになっている」特殊任務隊で、人知れず戦い国を守っている男達のお話です。

 軍人である秋元の視点からの物語なので、油断しているとそちらの思想にもっていかれそうになりました(先生のあとがきによりますと、特定のイデオロギーを主張しているのではなく、単純に物語を楽しんでほしいとのことでした)。今のご時勢、なかなかにきわどい内容なのではないでしょうか。平和ボケ、の言葉が突き刺さります。

 秋元達が所属しているのは、日本に存在していない、つまり日本の法律が及ばない次元で活動している部隊なので、テロを未然に防ぐ目的のためにこちらが目を覆いたくなるような手段も使います。特殊任務隊の隊員たちはそれぞれ何かに突出した才能を持っていて、そのうちのひとりが拷問の名手だったりするので、残酷なシーンが苦手な方は覚悟が必要です。それほど詳しく書かれているわけではありませんが、何が起こっているのかはしっかりわかるよう表現されています。

 そんな常に緊迫感溢れる現場で日々を過ごしている人々は皆硬派で、恋愛においても大人の駆け引きをしています。萌というには硬すぎるかもしれませんが、恋愛については旭の方が押しが強いというのがとてもいいです。大人の男達が仕事に命をかけながら恋愛をする物語では、これぐらい硬派なくらいが説得力があって好きです。

 また、変わり者ばかりの部隊の中で、一見すると突出してまともに見える旭が「一番歪んでいる」と評されることに妙に納得してしまいました。この状況で健全でいられるということが、不気味さを感じさせるんですね。

 読む人を選ぶ内容ではありますが、物語はリアリティがあってとても面白く、大変惹きこまれる作品でした。とにかく硬派なBLをお求めの方にオススメです。





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