<登場人物>
(攻)ヴィクター…伯爵邸で暮らす貴族。銀髪碧眼。
(受)佐伯翠(さえき みどり)…接触恐怖症。
佐伯耀司(さえき ようじ)…翠の兄。夜の仕事をして翠を養っている。
<あらすじ>
舞台はロンドン。過去のトラウマが原因で接触恐怖症の翠は、学校にも行けずに兄とふたりで暮らしています。
図書館からの帰り道、雨の中で座り込んでいた老婦人を助けた翠は、その婦人の孫・ヴィクターにお礼にと彼の屋敷に招待されます。しかし、慣れない風呂場でトラウマを思い出し、溺れてしまいます。
<感想>
両親が亡くなってしまい、10歳で入所した施設でトラウマを植えつけられた翠は、特に男性と接触することができません。施設から連れ出してくれた兄の耀司とふたりで暮らす翠はおそらく16歳くらいで、毎日図書館で勉強しています。
そんな時に翠が出会ったヴィクターは、翠の事情にも理解を示してくれた上に友人としてどこまでも優しく付き合ってくれます。パニックを起こした翠をなだめる姿は王子様のようです。年上なのに翠への丁寧語が崩れないのも、育ちのよさを感じさせます。
翠が周囲に優しく見守られてトラウマを克服しようとする姿勢は良かったです。ただ、耀司に大事にされすぎてだいぶ世間知らずになってしまっています(施設での出来事を考えると仕方ないのですが)。兄を支えようとあらぬ方向に踏み出してしまうのは、読んでいてかわいそうになってしまいました。
あとは、兄の耀司が不憫すぎました。自分も子供のうちからひとりで弟を養ってきたのに、ストーカーされ、生死をさまようほどの怪我までさせられて。すべては一応解決しましたが、耀司はこれから幸せになれるんでしょうか……。ヴィクターには耀司からも目を離さないでいてほしいです。
健気な受が貴族の攻に大事にされる素敵なお話でした。その分、佐伯兄弟の抱える事情はとても重いです。少年が大人に乱暴されたり、刃傷沙汰、受が身売りしようとする展開が苦手な方は注意したほうがよさそうです。
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