悪辣色男 中原一也(著)/奈良千春(イラスト) 【小説感想】

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<登場人物>

 (攻)鮎川斉昭(あゆかわ なりあき)…青年実業家。高級クラブのオーナー。30代前半。

 (受)川崎貴文(かわさき たかふみ)…商社を解雇され、求職中。既婚、3歳の息子がいる。39歳。


<あらすじ>

 勤めていた商社を39歳で解雇されてしまい、職を探していた川崎。知り合いの紹介で鮎川がオーナーの高級クラブで働くことになります。鮎川はクラブを「男だけの大人の社交場」だと説明していたものの、その実態は川崎の考えとは異なっていました。


<感想>

 自分の中に封印していたはずの願望を39歳にして暴かれていく川崎の葛藤と、さらに鮎川との関係が川崎の中でどこでどう繋がっていくのか、最後まで目が離せませんでした。

 冒頭では、鮎川のもつサディスティックな雰囲気に川崎が圧倒されているだけなのかと思いましたが、実は川崎は過去にしっかり種を植え付けられていた様子。それが時を経て掘り返されていく過程の描写には目を見張りました。

 遠い昔に蓋をしたはずの川崎の願望は鮎川によって確実にあらわになっていくのですが、川崎は既婚者で、3歳の息子を持つ身。もとから幸せとは言い難い家庭だったとはいえ、このあたりにどう決着をつけるのか終盤までわからずにハラハラしました。

 意外だったのは、川崎が決断を下すのに鮎川の存在がいい方向に作用していたことでした。鮎川の川崎に対する仕打ちは愛や恋というよりは執着が強い印象だったのが、川崎のおかげで終盤で変化を見せたのは本当によかったです。鮎川が川崎の家族のことを考え自ら距離を取ったのには感動すら覚えました。冷酷で実年齢よりもだいぶ大人びていた鮎川との本来の年齢差が感じられるようになってくると、川崎もただ翻弄されているだけではないのがわかって安心できました。

 愛を知らなかった鮎川がこれほどの変化を見せてくれるとは、ここから先に進んだらどうなっていくのか、妄想が楽しいです。ふたりが一緒に暮らす日がきたら両方ともいい年になっていそうですが、それも見てみたくなりました。殺伐とした雰囲気の内容からはとても予想できなかった、穏やかな幕引きでした。


<オススメ要素>

・愛し方を知らない執着年下×秘めた願望が暴かれる既婚子持ち。


<関連作品>

・電子書籍(お試し読みができます。)

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