賢者とマドレーヌ 榎田尤利(著)/文善やよひ(イラスト) 【小説感想】

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<登場人物>

 (攻)風読み(かぜよみ)…名家出身のアーレ(支配階級)。天候を予測できる聖職者。

 (受)マドレーヌ…アラズ(森の部族)。盗みをして捕らえられた。紅玉髄の瞳。


<あらすじ>

 名家の生まれで、天候を予測できる天恵を持つ風読み。毎日その日の天気をジュノの民たちに伝え、聖職者として慕われています。
 ある日、ジュノの民家で盗みを働いたとして瀕死の状態で捕らえられていた、アラズと呼ばれる森の部族。珍獣好きで知られる風読みは、アラズの紅玉髄の瞳に惹かれ自分の屋敷へと連れ帰ります。


<感想>

 アルダ(半分)が見つかれば互いに身体が反応し、死ぬまで添い遂げるつがいとなる……運命を思わせる冒頭の記述に、気持ちよりも体の反応がきっかけになるタイプのお話かな、と勝手に予想していました。

 しかし私の単純な予想は見事に打ち砕かれました。「美しき石像」と呼ばれるほど感情の起伏が見られなかった風読みが、運命のアルダ・マドレーヌとの出会いによってむしろ人間らしさを取り戻していく。最近は運命といえばまずは体が反応し、まるで獣のように翻弄されるお話が私の中では主流だったので、てっきりこちらもそうなのかと考えていたためとても新鮮でした。

 壮大さを超え、もはや哲学レベルに思えてくるほどの世界観に圧倒され続け、2段組約300ページの本を読み終わって気が付いたのは、これはふたりのほんの出会いの物語にすぎなかったこと。なんということでしょう。私が見せてもらっていたのは、広い広い世界の一体どれくらいだったのか。どこまでも続いていきそうな果てしなさにめまいがしそうです。

 最後に、どうしても触れずにいられないキャラ・プティ。プティを表紙カバーに見つけたときは大歓喜でした。何度も眺めていたイラストなのに、プティがプティとわかるまで全く認識できずにいました。すごい。凄過ぎる。私もプティを眺め、あの腹毛に埋もれたい。文善やよい先生のイラストを額縁に入れて飾っておきたいくらいモッフモフでした。


<オススメ>

・風読みの聖職者×正体不明の森の部族。


<関連作品>

・シリーズ
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