戀のいろは 御堂なな子(著)/テクノサマタ(イラスト) 【小説感想】

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<登場人物>

 (攻)藤邑冬吾(ふじむら とうご)…高利貸し。悪辣非道なやり口から鬼と呼ばれている。

 (受)ほたる…借金のかたとして冬吾に売られた。


<あらすじ>

 悪辣非道な高利貸しとして有名な冬吾のもとに、借金のかたとして売られてきたほたる。自分の現状すら理解できずにやってきた痩せっぽちのほたるを見て、冬吾は新しい主人として自分のところで奉公させることにします。
 以前の場所とは違い、ほたるは衣食住の満たされた生活を送れるようになります。優しくしてくれる冬吾のため懸命に尽くすうち、ほたるはまだ理解できない胸の痛みを覚えるようになります。


<感想>

 私にとって健気受の教科書のような作品で、心が荒んでいるときに手に取ってはどこまでも健気なほたるさんに癒されています。

 時代は大正、「明治の末期から始まったデモクラシーの騒乱が、今なお帝都を覆い尽くしていた」頃の冬。浅草で高利貸しを営む冬吾のもとへ、借金のかたとしてほたるが売られてきます。

 ほたるは捨て子だったものの、拾われた家ではじめは大切にされていました。ところが、そこの旦那夫婦に子供が生まれた途端に下働きにされ、ひどい扱いをされるようになったというのが不憫さに拍車をかけています。

 痩せっぽちな上に体中に生傷のあるほたるのあまりの惨状に、自分のところで奉公させることにした冬吾。3日も何も食べていなかったというほたるが、炊き立てのごはんで作ったおにぎりをほおばって号泣する場面ではこちらまで泣きそうになりました。

 ご飯に寝床も与えられ、勉強も教えてもらえるようになったほたるは、冬吾のために必死に尽くします。読み書きを覚えて冬吾へと書く手紙がとてもかわいいです。はじめはほたるの話す言葉がひらがなだらけだったのが、次第に漢字が増えていくのが成長が感じられて嬉しくなります。

 しかし、ほたるにとってはどんなに優しい旦那様であっても、冬吾は浅草で鬼と呼ばれるほどの高利貸し。いつ命を狙われてもおかしくない状況で生きています。そんな冬吾に自覚なく想いを寄せるほたる、健気受の鑑のようなお方です。

 ほたるが勉強したり周囲の人々と関わりながら自分の感情を理解していく様子がとても丁寧に描かれていてとてもよかったです。無垢なほたるに手を出す冬吾にこちらはニヤニヤしつつ、でも無理強いはさせずほたるの成長に合わせてひとつひとつ教えていく様子に大変萌えました。何も知らない受に一から教えていくって、なんかいいですね。

 「いとしいとしというこころ」について勉強になったとてもいいお話でした。『戀のいろは』というタイトル、本当にぴったりだと思います。


<オススメ要素>

・大正健気受。


<関連作品>

・電子書籍

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