BOYS OF THE DEAD /富田童子 【漫画感想】

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<登場人物>

 (攻)アダム…黒髪のユダヤ系。

 (受)ウィリアム…アダムに連れ回されている。18歳。


 (攻)ライナス=カーター…山奥のコンテナで暮らしている。

 (受)コナー…ライナスの恋人。


 (攻)レイモンド…記者。

 (受)ローレンス…湖上の家で兄の帰りを待っている。


<あらすじ>

 日曜の夜、客のいないレストランを訪れた奇妙な二人組。店主に対し自分たちは兄弟だと説明しますが、兄が離れた途端、残された弟は「あの男に誘拐されてる」とこれまでの経緯を語り始めます。


<感想>

 噛まれて感染すると人が変異体と呼ばれるゾンビになってしまう世界で、それぞれの愛や絆を貫く3組の物語が収録されていました。3組とも何かしらの繋がりがあり、何度も読み返しては毎回新しい発見があり惹き込まれます。凄い本でした。

 アダム×ウィリアムのお話は1話のみにもかかわらず、2話以降も思い出すことになる濃い内容でした。アダムのセリフひとつひとつに深読みしたくなる要素が詰まっていて、2周目の印象がガラッと変わります。気がつけば、たとえほんの少しでもアダムが報われる瞬間がありますようにと願っていました。

 2組目のライナス×コナーは表紙に登場しているふたりで、一番ゾンビ映画っぽい切なさを味わえました。どこまでが現実なのかもわからなくなる過酷な状況、警官の二人組との比較のおかげでライナスとコナーの若さと情熱が伝わります。彼らの逃避行の果てが実はすでに示されていたと分かったときは鳥肌が立ちましたが、最後まで一緒だったんだと理解すれば不思議と穏やかな気持ちになれました。

 最後のレイモンドとローレンスのお話では、切なさと同時に伏線回収に目を見張るばかりでした。孤立した湖上の一軒家、極限状態で歪んでしまった兄弟愛は、レイモンドのおかげで活路を見いだせたといって良いのでしょうか。

 そしてレイモンドがレストランを訪れてからのたった数ページで語られる彼らの物語は、あまりの情報量の多さに隅から隅まで眺めまわしてしまいました。それからカバー下の演出、目次タイトルの一部が「Me」と表記されていることなどから、この本がレイモンドのノートであることがわかります。

 まだまだ物語を紐解くヒントがあるのではないかと何度も本を開いては、まるで本当に彼らが存在したかのような感慨に耽り、主人公たちが貫いた愛に想いを馳せています。


<オススメ要素>

・極限状態で貫かれる愛。
・巧みな伏線と構成。


<関連作品>

・電子書籍(お試し読みができます。)

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