<登場人物>
(攻)如月雪也(きさらぎ ゆきや)…本名白松龍一。映の探偵助手。実家はヤクザだが、家業は継いでいない。
(受)夏川映(なつかわ あきら)…探偵事務所所長。和装。珍妙な人やものを引き寄せる超トラブル体質。28歳。
<あらすじ>
映がロシアで描いた襖絵がメディアに取り上げられ、映の実家に取材の依頼が殺到。本格的な絵画での活動再開に迷いのある映は、同時に雪也が忙しくなり相談する機会を逃していました。そんなとき、雪也の弟・龍二により、雪也には「特別な女」がいることを知らされます。
<感想>
フェロモン探偵シリーズ10冊目です。これまでに映のトラウマ関連についてはだいたいが明るみになり新たな道へ踏み出そうとしているのに対し、今回は雪也自身について焦点が当たっていた印象です。
映への執着はちっとも薄れておらず特濃な絡みを見せてくれるのに、事情を何も説明せずに「特別な女」のところへ通っているらしい雪也。雪也本人以外からもたらされる目撃情報がただならぬ事情を予感させます。
雪也の過去は今までのお話の中でも事実として出てきてはいましたが、それがこんな形で雪也を縛っていたとはびっくりでした。しかも明里さんの気持ちがまたなんとも複雑で……。雪也を「罪な男」だと考える映に激しく同意するばかりです。
そして雪也を過去から解放するのに間接的に大きく貢献してくれたのが、前回彗星のごとく登場した川越さんです。川越さんが直接何かしたわけではないものの、川越さんを通して映が出会った庄司さんの活躍により、ストーリー全体にほんのりファンタジーな香りが添えられた気がします。庄司さんの顛末が明らかになってから、もしかして雪也にもそんな現象が起きるかも?と期待が膨らみ、おかげで雪也の感じた「錯覚」にとても説得力がありました。
伏線とは少し違う気がするのですが、こういうストーリーの組み立てや相互作用の美しさってどう言い表せばいいのでしょうか(構成……?)。すべて読み終わったあと、全体の流れを思い出してはその美しさに惚れ惚れしています。
<オススメ要素>
・雪也の過去。
<関連作品>
・電子書籍(お試し読みができます。)
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