ばかの恋 /ツブキ 【漫画感想】

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 単行本の表紙右上の烏丸に心射抜かれ購入しました。表題作の他に4作品収録されていて、全部で5組のカップルが登場します。
 期待を裏切らないシュールなノリと雰囲気にどのお話も笑いがとまらず、1冊読み終えるころにはヘトヘトに疲れていました。どこから読んでも独特の雰囲気は伝わると思うので、気になる方は電子版などでのお試し読みがオススメです。



『ばかの恋』(表題作)



<登場人物>

 (攻)烏丸雄大(からすま ゆうだい)…医学部生。バリタチ。

 (受)佐和士道(さわ しどう)…大学生。天然。


<あらすじ>

 高校時代にゲイをカミングアウトした稀代のモテ男・烏丸。すでに彼氏が何人もいた烏丸でしたが、すぐにフラれては親友の佐和のところで泣いて酔いつぶれていました。
 そんな烏丸が、突然マサチューセッツで結婚式を挙げると佐和に報告。空港まで見送りに出向いた佐和でしたが……。


<感想>

 4話+おまけに加えてちょこちょこ小話的な短編が差し込まれています。各話の長さにバラつきがあるのと、次の話へと進むタイミングが若干唐突な印象で、最初はペースをつかむのが大変でした。

 バリタチゲイの烏丸(巨根)と、烏丸が長いこと片想いしていた親友の佐和とのお話。突然海外で結婚してくると言い出した烏丸でしたが、本当の気持ちは佐和本人に(というかたぶん周囲にも)バレバレだったという。空港で佐和が烏丸を引き止める流れは劇的でとても素敵でした。

 バリバリのタチを公言していたヤリチンの烏丸だったのに、いざ佐和と付き合うことになってからはかわいいくらいのヘタレっぷりでした。佐和が尊すぎて、性欲のスピードに自分自身が追いつけないと騒ぐ烏丸。それでも好きにしろと男を見せた佐和でしたが、直後に烏丸の巨根に逃げ帰る姿には爆笑でした。夢に出るほどの大きさって一体どれほどのものだったのでしょうか……。

 基本的に笑いながら読んでいると、キャラクターが時々びっくりするくらい美しく男らしい顔を見せてくれてはっとさせられます。いつまででも見ていたかったです。



『親友の長い話』

<登場人物>

 (攻)狩谷守(かりや まもる)…直のストーカー。眼鏡。

 (受)中川直(なかがわ すなお)…大学生。佐和の友人。


<あらすじ>

 最近ストーカーに遭ったと親友に語り始めた直。妙に視線を感じたり、パンツがなくなっていたりと変なことが立て続けに起こっているといいます。そこで直は大学を休み、家の周辺を見張るようにしたところ……。


<感想>

 表題作に登場していた佐和の友人・直のお話。ほんの少しの登場でもそのぶっ飛び具合を垣間見せていた直でしたが、予想をはるかに上回るとんでもない恋愛をしていました。

 ストーカー相手に手紙を残し、しかも正体を突き止めた後にそのストーカー・守を好きになってしまった直。守も見た目はとても真面目そうなのに、真面目な顔でヤバイことをいうおもしろい人でした。

 マトモ枠だと思われる直の親友や弟の心配をよそに、ちゃっかり関係を進めてしまうふたりに、不思議と最後には微笑ましい気持ちになっていました。単行本の中ではこのふたりが一番のお気に入りです。



『バーオーシャンにて』

<登場人物>

 (攻)敷島穣治(しきしま じょうじ)…バーのマスターの友人。バツイチ。33歳。

 (受)眞弓秋輝(まゆみ あき)…高校生。バーのバイト。女顔。16歳。


<あらすじ>

 かつては遊び人だった敷島は、秋輝から受けた罵倒に恋をして以来、秋輝がバイトをしているバーに通いつめています。しかし秋輝には彼氏がいるようで……。


<感想>

 女の子に間違えられるくらいきれいな顔をしている秋輝。でも口を開けば罵倒に舌打ちが飛び出す強気な男の子です。男子校の先輩と付き合っていますが、うまくはいっていない様子。

 そんな秋輝にウザいほどの愛をぶつけてくる敷島(オッサン)。秋輝と先輩の関係がちょっと切なかったんですが、なりふりかまわない敷島の変態さのおかげでずっと楽しかったです。



『臆病なペーパーナイフ』

<登場人物>

 (攻)安積(あづみ)…学生。モテる。

 (受)若木(わかき)…学生。安積につきまとっている。


<あらすじ>

 若木につきまとわれてもうじき1年になる安積。若木がいつも視界に入ってくるせいでカノジョにふられてしまった安積は、ぼっちクリスマスを回避するため、ためしに若木と付き合ってみることにします。


<感想>

 全部で9ページと短いお話なんですが、とてもおもしろかったです。

 いかにもな風貌で安積につきまといを続けている若木、思いあまって安積を刺してしまうほどに(ただしペーパーナイフで)愛が重いです。しかしそこまでされても笑って流している安積も実は普通じゃない気がします。

 安積がひとりクリスマスを回避するためという理由でお付き合いの始まったふたり。若木の泣き顔が可愛い上に、本当は自分が安積を攻める予定だったと喚いているのがもうたまりません。この先安積がどこまで毒されてくれるのかを想像するとニヤニヤが止まらないです。



『優柔不断は恋になる』



<登場人物>

 百瀬(ももせ)…高校時代君島に告白したことがある。

 君島(きみしま)…百瀬の高校の先輩。


<あらすじ>

 カラオケで合コン中だった君島は、高校の後輩・百瀬と数年ぶりに再会します。君島は高校を卒業するときに百瀬に告白され、返事を保留したままずっと会っていませんでした。


<感想>

 再会もののなんだかきれいでいい話でした。かわいい後輩だった百瀬に突然告白され、君島が本気で迷って返した答えが「保留」。それ以来ずっと心に引っかかっていた気持ちが、偶然の再会を機に再燃する心情が丁寧に綴られています。

 毛布をかけてくれた百瀬に、「襲われるかと思った――! クソッ優しい奴め!」と心の中で叫びながら顔を赤らめる君島がかわいいです。思わせぶりな百瀬もなんかいい。

 最後のこのお話が一番読みやすい気がします。下ネタを挟みつつも不思議と温かい気持ちになれる、ラストにふさわしいお話でした。



<オススメ要素>

・ヤリチンの恋模様。(カバー下より)



<関連作品>

・電子書籍(お試し読みができます。)

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