おきざりの天使 夜光花(著)/門地かおり(イラスト) 【小説感想】

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<登場人物>

 (攻)高坂則和(こうさか のりかず)…高2。生徒会長。人間観察が癖。

 (受)嶋中圭一(しまなか けいいち)…高2。生徒会副会長。記憶力がいい。


 日高徹平(ひだか てっぺい)…高2。圭一の従兄弟で、一緒に暮らしている。


<あらすじ>

 幼い頃に両親を亡くし、今は親戚の家で暮らしている圭一。叔父夫婦は優しく、従兄弟の徹平とは一緒に登校するほど仲良くしています。同じ高校の生徒会長・高坂とは互いに意識し合っていましたが、圭一が正直に自分の気持ちを伝えようとしたとき、学校で異変が起こります。


<感想>

 久しぶりに2段組みのノベルスを読みました。話の長さは普通の倍はあると思われるのに、不気味な力に引っ張られるようにしてページをめくる手を止められませんでした。読み手を選ぶ内容ではありますが、私はとんでもなくおもしろかったです。

 あとがきによればこちらは「パニックもの」。その名の通り突然理不尽な環境に置かれた登場人物たちの焦りや不安、衝動などが伝わり、まるでホラー映画を見ているようでした。私は2日かけて読んだのですが、間の夜は眠れなかったです。

 受の圭一は小学生の頃に両親を亡くしたものの、今は親戚の家で大切にされていて、同居中の従兄弟・徹平とも良い関係を築けている様子。生徒会長の高坂とも甘酸っぱい青春を共有している……ように見えるのですが、なぜか常につきまとう不穏さ。物語の約3分の1を占める高坂とのなれそめなんて青春の恋愛そのものなはずなのに、圭一が時折のぞかせる不安定さがこのままでは終わらない雰囲気を醸し出してきます。しかも門地かおり先生のイラストがものすごい相乗効果で。まさにこの仄暗さ、という感じでぴったりでした。

 そして圭一たちが住む地域を襲った地震をきっかけに、世界は一変します。オチについてはほどよくヒントが散りばめられているので、わかる人には早々に予想がつくのではないでしょうか。とはいっても、逃げ場のない空間で追い詰められていく緊迫感と、異常事態で高まっていく圭一をめぐる三角関係から目が離せませんでした。徹平の本当の気持ちは断言できませんが、この状況なら3Pにもつれこんでも私は喜んで萌えたと思います。

 最後の圭一のセリフが意味深ですが、それは彼らのこれからの頑張りでいくらでも現実の幸せが上回ると信じています。


<オススメ>

・パニックホラー。


<関連作品>

・電子書籍(お試し読みができます。)

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