ヘプタゴンは微笑む 水原とほる(著)/幸村佳苗(イラスト) 【小説感想】
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<登場人物>
(攻)鬼防孝治(きぼう たかはる)…公安調査官。情に厚いタイプ。38歳。
(受)室谷七生(むろや ななお)…美貌の宗教学者。睡眠障害を患っている。
<あらすじ>
大学での講義を持っている宗教学者の七生のもとに、ある日公安警察官の鬼防が訪ねてきます。鬼防の目的は、国の特殊機関である「ヘプタゴン」の一員である七生に、ある宗教団体について捜査協力してもらうことでした。
宗教団体の揉め事の背後にある怪しげな存在を明らかにするため、鬼防と行動をともにする七生。長年睡眠障害を患っていた七生ですが、鬼防といるとそれが改善されていることに気づきます。
<感想>
国の特殊機関「ヘプタゴン」に所属する人々は、国の行く末を左右する財政界の事案についてアドバイスをする立場にあり、「知」の面から国を守っています。水原先生のこちらよりも新しい本「旭光に抱かれて眠れ」と設定の雰囲気は似ていますが、あちらは武闘派だったのに対してこちらは知性をもって国のために戦っている人達のお話です。ですので危ない目にはあっても残酷なシーンにはならないので安心して読めます。
ふたりが追う事件は宗教団体の内輪揉めに乗じた外部組織との対決へと発展し、国を守る戦いになります。七生が学者というのもあってかなり硬い語り口ではありますが、不思議と混乱や読みにくさは感じませんでした。事件の全貌を一言で説明するのは難しいんですが、理解はしやすいと思います。
学者と公安警察が事件を追うだけだったら、BLとしてはいまいち物足りなかったと思います。ですが、私の性癖にぐっさりささる萌がありました。
七生が十代の頃から長いこと睡眠障害を患っているのです。薬を飲まないと眠れない生活を送っていたのですが、鬼防は七生の顔を見ただけでそれを言い当ててしまいます。おまけに、鬼防といると七生はぐっすりと眠れてしまい、精神も安定するという相性ばっちり具合。こういうの好きなんです。
鬼防といると不思議とよく眠れるという事実を受け入れながらも、七生が学者らしく分析しているのがなんだか微笑ましいです。「あなたは私の睡眠導入剤です」と、これを睡眠障害を持つ七生が言うとものすごい告白に思えます。
「ヘプタゴン」という言葉についてはそれほど深く考えずに手に取ったんですが、読んでいてはっとしました。そういえば七角形って作れないんですね。
ヘプタゴン、七芒星の会、穂芒庵、七生……まだまだ、センスの光るキーワードがありそうな気がします。
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