名前も知らず恋に落ちた話 水原とほる(著)/yoco(イラスト) 【小説感想】

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<登場人物>

 (攻)渋谷昌宗(しぶや まさむね)…建設現場の管理技術者。相棒はトライアンフのスクランブラー。34歳。

 (受)宮脇克実(みやわき かつみ)…建築デザイナー。相棒はドゥカティのスクランブラー。31歳。


<あらすじ>

 週末はバイクに乗って独りで山を走るのが趣味の克実。ある日、ライダー達が集うカフェで克実と同じスクランブラーを相棒にするマサムネと出会います。同じバイクであることや、走りの相性がとても良いふたりは意気投合し、互いの下の名前以外は何も知らないまま山を走り、キャンプに出かけたり。週末にマサムネに逢えるのを楽しみに日々を過ごすようになった克実ですが、建築デザイナーとしての仕事で向かった建設現場で、マサムネが管理技術者として現れます。


<感想>

 バイク乗りのふたりのお話でした。克実のバイクへのこだわりや愛情が伝わってきて、バイクには詳しくない私も羨ましくなってしまいました。

 私の場合は、克実の後輩の飯田さんと一緒でスクーターには乗るので、「雨の日は最悪」というところに大変共感を覚えました。それから、道路でバイクと横に並んでしまったときの妙な敗北感と憧れ。そんなことを思い出しながら読んでいました。

 克実と昌宗は、趣味を通じてあっという間に意気投合します。互いの素性を何も知らないままに出かけたキャンプでは、酔った勢い(?)もあってキスまでしてしまうほどです。走りの相性がいい、というのは経験はありませんがとても憧れます。

 その後、偶然にも仕事の現場でふたりは再会します。克実は建築デザイナー、昌宗は克実が手掛ける建設現場の管理技術者です。

 そこでまだ若い克実は、昌宗の前というのもあって仕事で大失敗をしてしまいます。このいい大人の「やってしまった」感が大変リアルでして、身に覚えのありすぎる私は正直読むのがつらかったです。そんな克実を変に励ますのではなく、静かに見守りつつ手を差し伸べてくれる昌宗の優しさが胸に沁みます。年上の包容力が遺憾なく発揮されていました。

 キスまではすぐだったふたりでしたが、その後は何も知らなかった互いについてを埋めるようにゆっくりと関係を進めていきます。何度かあるキス描写がどれも美しいです。

 それからふたりがようやく結ばれるとき、「バイクで走っていても、お前の後姿を見ながら……」という昌宗の発言にものすごい萌爆弾を投下していただきました。それってすごくエロくないですか、と変な声が出そうになりました。バイクには詳しくありませんが、確かにスクランブラーの後姿ってなんかこう……いいですよね……。特にライダーが前傾姿勢になったときとか……。

 心根が腐っている私は変なところに共感や感動を覚えてしまいましたが、克実と昌宗が趣味と仕事を通じてじっくりと恋愛を育む様子も見所かと思います。yoco先生のイラストが雰囲気にとても合っています。


<オススメ要素>

・趣味を通じ、本名も知らないままに夢中になる恋愛。
・バイク描写がかっこいいです。


<関連作品>

・電子書籍

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