純情彫刻家の不埒な指先 浅見茉莉(著)/伊東七つ生(イラスト) 【小説感想】

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<登場人物>

 (攻)真柴遼(ましば りょう)…美大でヌードモデルのバイトをしている。27歳。

 (受)影森瞳(かげもり ひとみ)…謎の多い人気彫刻家。スランプ中。30歳。


<あらすじ>

 夢中になれるものが見つからず、学生時代から続けている美大でのヌードモデル(アルバイト)でその日暮らしをしている真柴。そんな真柴に、美術雑誌の編集者・棚倉が取材のアルバイトを持ちかけてきます。その取材とは、妙な噂のある人気彫刻家・影森瞳のもとへモデルとして潜入し、記事のネタを手に入れることでした。


<感想>

 山の中のおどろおどろしい洋館から飛び出してきた、レスラーのようなマッチョ男性。彼は洋館を振り返ると酔ったように惜別の念を示し、涙しながら獣道へと駆け出していく……。

 という衝撃的なはじまり。あ、これおもしろいやつだ、と確信しました。

 冒頭のマッチョは、瞳に解雇されてしまったモデルさんのアンソニー。彼の行く末が気になるところですが、物語にはほぼ関係ありません。気になりますアンソニー……。

 気を取り直して感想を書きます。

 瞳は有名で人気のある彫刻家ですが、取材は一切シャットアウトしていて素顔も知られていないため、世の中では謎めいた人物としても知られています。瞳を有名にした作品が筋肉ムキムキマッチョ男性の石像だったため、瞳本人もかなりの体格の持ち主でモデルのことも美味しくいただいているのでは……と噂になっています。

 ですが本当の瞳は美少年と見まごうほどの綺麗な顔立ちをしていて、山中の洋館で暮らしながらスランプに陥っていました。そこにやってきたのが、マッチョではないけれどモデル体型の真柴です。

 手入れの必要な洋館に住んでいるのに生活能力のない瞳。真柴は瞳の面倒を見ながらモデルにも励み、信頼関係を築こうと奮闘します。

 厄介なのが、芸術家としてのスイッチが入った瞳です。真柴から欲しい表情を引き出すためなら手段を選びません。製作中はドSの顔に豹変する瞳ですが、真柴も黙ってはいませんでした。あまりの仕打ちに怒った真柴は、形成を逆転させます。そんなに欲しい表情なら自分でやってみろと。まあ、そうなりますよね。

 そんなこんなでふたりは仲良くなっていきますが、気持ちがはっきりしたところで、真柴の潜入取材がバレてしまいます。いい雰囲気だったふたりですが、ここで一旦離れてしまいます。

 ところが意を決して洋館に戻ってきた真柴が見つけたのは……。思わず噴き出してしまいました。瞳が作り上げていたアレコレは、真柴を思うが故の愛情表現だとはわかるのです。でもそこに真柴の「絶対使っただろ……」という心の声がツボに入ってしまい、面白すぎて笑わずにはいられませんでした。

 お仕事中は瞳がドS、そのまま肌色シーンになだれ込むと鮮やかに立場が逆転するのが楽しいお話でした。


<オススメ要素>

・オカン系攻。
・スイッチが入るとドSの受が、肌色シーンでは逆転。


<関連作品>

・電子書籍
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