表紙だけを見て猫が人間になる系のファンタジーかと勘違いしていましたが、猫がいる暮らしの中での人間同士の恋模様を描いた作品でした。全部で5組のカップルが登場し、それぞれ絡んでくる猫さんたちがとてもかわいいです。ただかなり可哀想な目にあう人も出てくるので、苦手な方は注意した方がよさそうです。
『捨てられ猫と猫じゃらし』
<登場人物>
(攻)陸(りく)…猫に好かれている。以前はクラブに通っていた。
(受)俊太郎(しゅんたろう)…高校生。金髪。リラを三毛庵に連れてきた。
リラ…俊太郎が三毛庵に連れてきた猫。陸にはまだ懐いていない。
<あらすじ>
お寺の中で謎の美坊主が営んでいる猫カフェ「三毛庵」。
クラブ通いに虚しさを感じていた陸は、偶然通りかかった三毛庵で金髪の高校生・俊太郎が猫に寄り添われて泣いているのを見かけます。それ以来、陸は俊太郎が気になって猫カフェに通い続けています。
<感想>
男の人にも猫にもモテる陸。俊太郎が気になってクラブ通いをやめてもセフレっぽい相手がいたようですが、そういう描写はごく自然に入るので驚くほど違和感を覚えませんでした。
俊太郎が金髪にした理由や必死にリラを守ろうとする姿が不憫ではありましたが、陸がとても優しそうなのでこれからはふたり穏やかに暮らしていけるといいなと思います。
ほのぼのまったり、いいお話でした。陸と俊太郎を見つめるリラの視線が、まるで保護者のようでおもしろかったです。
『白髪に黒髪』
<登場人物>
(攻)天井透(あまい とおる)…サラリーマンを辞めて実家の旅館「ひげの湯」を継いだ。
(受)風祭ツバサ(かざまつり つばさ)…元ホスト。金と黒猫だけを連れてひげの湯にやってきた。
<あらすじ>
3年前にサラリーマンを辞め、実家の旅館「ひげの湯」を継いだ透。ある日、ふくらんだ財布と黒猫を1匹連れただけの明らかに訳ありな客・ツバサが、泊めてほしいとひげの湯を訪ねてきます。
<感想>
明らかに訳ありげなツバサを泊めてしまう透さんが本当にいい人です。いい人なだけかと思っていたら、ツバサを追ってきた怖い人たちに啖呵を切ってしまうほど、肝の据わった頼れるお方でした。
こちらは受がチンピラに好き勝手されてしまうシーンがありますが、ツバサが強い人でそれほど悲愴感はありませんでした。
『化猫慕情』
<登場人物>
(攻)俊史(としふみ)…定年済。猫が苦手。
(受)新山結(にいやま ゆい)…大学時代、俊史と同じ部屋で暮らしていた。
<あらすじ>
俊史が仕事から帰ってくると、毎日同じ時間に同じエレベーターに乗ってくる一匹の白猫。気が付くといなくなっているその猫は、俊史に若かりし頃を思い出させます。
大学時代、俊史は同期の結と同居していました。親友だったふたりですが、俊史は大学で結についての妙な噂を耳にします。
<感想>
大学時代に一度関係を持った俊史と結でしたが、俊史の将来を心配した結は猫のココを連れて突然消えてしまいます。
それから40年以上が経ち、独り身になった俊史のもとに現れた一匹の白猫。一度離れてしまった二人を繋いでくれた、オッドアイのココが自由奔放でかわいいです。
『LAST SHOW』
<登場人物>
(攻)島田(しまだ)…ストリップバーの店長。元ヤクザ。
(受)キホ…ストリップバーのダンサー。№3。
<あらすじ>
ネコミミ、ネコしっぽを付けて踊るストリップバーの№3ダンサー・キホ。キホは店長の島田のことが好きでずっとアピールしていますが、島田は相手にしてくれません。
そんなキホが毛嫌いしている上客・片岡から、島田にあるショーの企画が持ち込まれます。
<感想>
怖い人たちが絡みつつもキホがいい子でいい話……なんですが、私は大ダメージでした……。好きな部類の話なのですが、心を抉られるような感覚を久しぶりに味わい、忘れられない作品になりました。
片岡が持ち込む企画というのが、キホをステージ上に拘束して人前で初めてを奪うというひどいものなのです。片岡に逆らえない島田は、直前になってキホを逃がそうとしてくれます。しかし、それをするともう島田と会えなくなると知ったキホは、自らステージに立つ決心をします。
地獄のようなステージを乗り切ったキホ。三毛庵に保護され、ステージ後に無事だったら島田に抱いてもらうという約束を叶えてもらおうとします。
ここからが本当にキツかったです。ひどい目にあったキホが明るく振るまっているのに対して、キホのステージを見ていることしかできなかった島田が、そのときのことを思い出してしまいます。
キホが本当に強くて明るくて良い子なので、島田と一緒に幸せになってくれることを願わずにはいられませんでした。
『描き下ろし』
<登場人物>
(攻)ジョルジュ…猫カフェの近所に住んでいるフランス人アーティスト。
(受)恵泉(けいせん)…猫カフェのオーナー。謎の美坊主。
<あらすじ>
寺に集まる猫を保護しているうちに、寺の一角で猫カフェをはじめることになった住職の恵泉。近所に住むフランス人のジョルジュは、恵泉が最近人の恋路にばかり気を揉んで自分に構ってくれないと不満を漏らします。
<感想>
ここまですべてのお話に登場していた「三毛庵」のオーナーで寺の住職・恵泉さん。謎めいた美坊主として紹介されていましたが、どうやらジョルジュといい仲だったようです。
恵泉さんの下着がどうにも色っぽいです。お坊さんですもんね、そうなりますよね。
表題作がかなりシリアスだったので、こちらの描き下ろしでどうにかほのぼの気分を取り戻すことができました。
<オススメ要素>
・猫さんがたくさん登場します。どのコもかわいいです。
・受がひどい目にあう展開がありますが、皆さん強いです。
地雷注意:モブ姦
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