ずっと、愛してた嘘 花川戸菖蒲(著)/皇ソラ(イラスト) 【小説感想】

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<登場人物>

 (攻)日下叡一(くさか えいいち)…大学生。中高生の頃に悠人をペット扱いしていた。

 (受)嵯峨悠人(さが ゆうと)…大学生。中学・高校時代は太っていたが、現在は王子様のような甘い美形。


 寺田梓(てらだ あずさ)…叡一の親友。秀才。


<あらすじ>

 高校生だった頃に太っていた悠人のことをブタと呼び、ペット扱いしていた叡一。悠人はそれが原因で高校を中退し、以来5年間ずっと叡一のことを忘れたことはありませんでした。
 大学生になって甘い美形に成長した悠人は、頼まれて参加した合コンで偶然叡一と再会。悠人のことを覚えていない様子の叡一に口説かれ、悠人はこの機会を利用して復讐してやろうと決意します。


<感想>

 恨みを持つ相手へと復讐を果たす物語では、たいてい復讐を企む側に肩入れして読みたくなります。ですので悠人が自分にひどいことをしていた叡一を振り回し、こっぴどく振ってやった時は「ついにこの時が!」とドキドキしたものですが、この時点でお話はまだ前半。ここから悠人に災難がふりかかり、叡一との関係が綺麗に逆転します。

 叡一の悠人への執着具合がなかなかに度を越えていて、過去の悠人への仕打ちについてはいじめのようなものなので、読み手を選ぶお話ではあります。基本悠人の視点で進んでいくので、叡一の本音は後半になって少しずつ零れ出るように明らかになっていきます。叡一の親友・梓がこれまた振り切れたキャラで、ふたりの間に入って良い働きをしてくれています。

 騙し騙され、利用してやったと思ったら今度は自分から頭を下げて利用されにいかなければならない……というめまぐるしいほどの形勢逆転展開が美しく、ここまでの作品は私はめったに読んだことがありません。

 悠人からしてみれば、終盤で気持ちが通じる前は叡一への恋心の自覚がありません。それでも肌色シーンはずっと甘さが感じられました。叡一に心は渡さないという決意があるのに、結局は叡一の手管に翻弄されてしまう悠人に萌が募ります。

 梓に『お前の最低ぶりは底がない』と言わせてしまうほどの叡一については、すべてにおいて悠人優先、しかしその愛情の表現方法がちょっと常人には理解不能です。声を出すと電気の流れる首輪をつけられた悠人とのシーンでは、悠人がかわいそうなのにここが一番萌えてしまうという私にとっては悲しい現実を突きつけられました。

 そんな全体の流れだけでなく、細部に渡って忘れられないシーン満載のこちらの作品、もう何年も前の発刊ですが、今でもよく手に取って読み返しているお気に入りの一冊です。


<オススメ要素>

・互いの立場が入れかわる形勢逆転展開。


 地雷注意:攻が受をいじめていた過去があります。





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