恋に焦がれる獣達 ~愛を与える獣達シリーズ~ 茶柱一号(著)/むにお(イラスト) 【小説感想】

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<登場人物>

 (攻)テオドール…テオ。獅子族。レオニダス次期国王。

 (受)ヒカル…ヒト族。おとなしくて引っ込み思案。チカとダグラスの子。


 (攻)ディラン…犬族。フィシュリードの外交官。マーフィー商会の次男坊。

 (受)イリス…ヒト族として海辺の小さな村で暮らしている。


 (攻)ガルリス…竜族。スイの半身で伴侶。脳筋。

 (受)翠(スイ)…ヒト族。医者。チカとゲイルの子。


<あらすじ>

 「特別」な家族に囲まれ、自分だけが「普通」であることに悩んでいるヒカル。従兄弟で次期国王のテオドールのことが大好きですが、自分だけが普通の存在であることが足枷となり気持ちに素直になれずにいます。


<感想>

 『愛を与える獣達』の新シリーズ1巻目で、『愛けも』の主人公チカ・ダグラス・ゲイルの子供世代達が中心となるようです。収録されている作品は3つで、長編2つは書き下ろし、間の短編「シンラ・スイの黒歴史ノート」のみムーンライトノベルズで発表済、とありました。

 前半の「秘めたる思いは獅子王と共に」はテオ×ヒカルの過去編で、ふたりが正式に伴侶になるまでのお話です。『愛けも』シリーズの方ではすでにラブラブバカップルな様子を見せつけてくれていたテオとヒカルに、まさかこんなに苦悩した過去があったとはびっくりです。

 離れたところから見れば十分に特別に見えるヒカルでしたが、とんでもなく優れた存在の両親や兄弟たちに囲まれ、しかも親戚たちに過剰に守られてしまったことも災いしヒカル本人は自分が普通であることで悩んでいました。

 長年に渡って熟成されたヒカルの卑屈さはちょっとやそっとでは解消されず、ついにはひとり立ちをめざして辺境の地へ旅立ちます。追ってきたテオのスパダリ(?)っぷりにはちょっと笑ってしまいました。次期国王はそんなことまでできるのですね、と。

 後半の「零れる涙と祈りの旋律」では、舞台はフィシュリードへと移ります。チカが和食に使う食材を取り寄せている国です。こちらの主役となるディラン×イリスはチカたちの親戚ではありませんが、医学の研究のためにフィシュリードにやってきたガルリスとスイが活躍しています。

 こちらは彼らの未来がまだわかっていない分、途中何度もヒヤヒヤさせられ、切なさも倍増でした。イリスたちに課せられた大変な生き方について、彼の心境から少しずつ明かされてきます。良いタイミングでチカの国のおとぎ話が出てきたりして、キャラ達の心情を揺さぶってきます。

 物語の全容がちょっとずつ明らかになっていく展開なので、ネタバレを気にする方は裏表紙は見ずに読んだ方がいいかもしれません。ヒントは満載なので最初からわかりそうにも思えますが……私は我慢できずにはじめからカバーを広げてイラストを堪能してしまったので、正直なんともいえません。ただこれ以外にも驚かされる要素はあり、風土病に関しては本当に予想できませんでした。

 気持ちの面ではしっかり互いを想っていながらもどこか初々しいディランとイリスとは対照的に、ガルリスとスイの熟年夫婦のようなやりとりはすごく楽しかったです。こちらもいろいろあっただけに、もうすっかりできあがっている雰囲気に安心しました。

 『恋けも』シリーズも『愛けも』と平行して進行していく予定とのことで、楽しみをまたひとつ増やしてもらえて嬉しいです。



<オススメ要素>

・異世界ファンタジー、新シリーズ1作目。
・チカ達の子供世代のお話。


<関連作品>

・電子書籍(お試し読みができます。)

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