愛を与える獣達 『番』と獣は未来を紡ぐ 茶柱一号(著)/黒田屑(イラスト) 【小説感想】

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<登場人物>

 (攻)ゲイル…熊族。寡黙で無骨。

 (攻)ダグラス…獅子族。レオニダス王国の王弟。

 (受)森羅親之(しんら ちかゆき)…チカ。治癒術師。40歳で異世界に転生し、少年の姿に。


<あらすじ>

 ゲイル、ダグラスの2人の伴侶とともに、3人の子供にも恵まれ幸せに暮らしているチカ。そこへ、現国王の伴侶であるキリルとその息子のアレクセイが訪ねてきます。ふたりの説明によれば、ヘレニアの森でヒト族の村が発見されたものの危険な状態にあるとのこと。話を聞いたチカは自分と同じヒト族を救うため、伴侶たちとともに森へと向かいます。


<感想>

 『愛を与える獣達 無骨な熊と王者の獅子と異界の『番』』、『愛を与える獣達 むすんだ絆と愛しき『番』』に続くシリーズ3作目です。本編は前の2冊で一応完結していて、こちらの3冊目には主人公たちのその後や周囲のキャラクター達にまつわる番外編がたくさん収録されていました。

 まず広げたカバーイラストに大歓喜です。変わらず幸せそうな3人の周りにいる人々はもしかして。本冒頭の人物紹介と照らし合わせながら誰が誰なのか確認するたび、大きくなったんですね……と感慨が押し寄せてきました。

 一番最初に収録されているのが書き下ろしの表題作で、本の3分の1くらい、約150ページあります。ヘレニアの森でキャタルトンから逃げてきたヒト族の村が発見されたものの、かなり危険な状態らしくチカたちが救援に向かいます。

 チカも奴隷として扱われていたキャタルトンでは、今でもヒト族が迫害を受けているようで心が痛みます。しかしこの村を救ったことでヒト族解放へのひとつの足がかりとなった様子。ゲイルとダグラスのチート級の強さのおかげで、緊迫した場面も不安なく読めました。

 私はシリーズ通してチカが医者としての本領を発揮するシーンが大好きでして、今回は治癒術の他にもこの世界で医学が浸透してきているのがわかって感激しました。チカはもっと国民にもてはやされればいいと思っているので、ヘクトル様によろしくお願いしたいです。

 後半からは番外編に突入です。気になっていたたくさんのキャラクター達のなれそめやその後のお話がたっぷり読めます。中でも前作から楽しみにしていたヨハン×リヒト、ガルリス×スイがお気に入りとなりました。

 王族の血を引くリヒトにまさかモブ姦(未遂)の危機が迫るとは、前作で愛らしい子供時代が描かれていただけになにもそこまでしなくても……と思ってしまったんですが、ヨハンがリヒトのためにあそこまで激怒するとはびっくりで、結局は大変に萌えてしまいました。

 スイが恋心をこじらせていたのは意外で、でもどんなに面倒くさい性格になっていても不思議と微笑ましい気持ちになります。スイは元気に生きていてくれるだけでいいんです。それにしても、竜族って怒らせると怖いんですね。怒りで我を忘れると何をするかわからないキャラってすごく好きです。

 他にも番を見つけた親族たちが幸せに暮らしている様子が見られてどれも嬉しくなりました。やっぱり、と思える人たちもいれば、予想外なところがくっついていたり。短編の連続にもかかわらずまた一気に読んでしまいました。

 巻末の書き下ろしでは、チカと出会う前のゲイルとダグラスのお話で、ゲイルとダグラスが大怪我を負った顛末が明かされます。過去のこととはいえこれはかなり切ないものがありました。今の3人の幸せがせめてもの救いです。

 新キャラも気になる……!と思っていたら、そちらに関連するお話も別のアンソロジーで発表済とのこと。遅ればせながらハマったシリーズ、まだ新作が読めると思うと嬉しいです。


<オススメ要素>

・異世界ファンタジー、シリーズ3作目。
・番外編も大量。


<関連作品>

・シリーズ
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 マルクスのお話


・『恋けも』シリーズ
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