夏陰―Cain 水原とほる(著)/高緒拾(イラスト)
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<登場人物>
(攻)岡林祐司(おかばやし ゆうじ)…組長代行として関東の新興勢力・白神組を取り仕切っている。
(受)沢田雪洋(さわだ ゆきひろ)…大学生。大学の授業料と生活費のため、夜のバイトをしている。
若松明(わかまつ あきら)…雪洋の世話役。
<あらすじ>
両親を亡くしている雪洋は、夜のバーでアルバイトをしながら大学に通っています。
しかしアルバイト中にバーに現れた岡林に気に入られ、その場で暴行されて怪我をした雪洋は入院することになります。
唯一の肉親である姉まで引き合いに出され、雪洋は退院後も刃向かえずに岡林と暮らし始めます。
<感想>
数年前にやっと手に入れた、水原とほる先生のノベルズデビュー作品。はじめて読んだときの衝撃は今でも色濃く残っています。
とにかくいろんな方面で容赦がなかったです。反社会組織の要人に気に入られるとはどういうことかを突きつけられている気がしました。
強烈なカリスマ性を持ち、若いものの中には心酔している者もいるという岡林。この岡林が全くブレないのがすごかったです。雪洋をはじめ、カタギの側からの常識で考えれば「壊れてしまった人」でも、その行動には一貫性があり筋が通っているように見えてしまいます。岡林の雪洋に対する仕打ちもひどいものなのに、なぜかそこにすさまじいほどの愛が感じられるのです。
雪洋は顔が整いすぎているが故に時折冷たい印象を与える強気の美人さんです。苦労しつつも普通の大学生だったのに、岡林に気に入られてしまったのが運の尽き、としかいいようがありません。
それでも、雪洋は自分の置かれた現実に向き合っていきます。頭のいい雪洋は、自分で懸命に考えて少しづつ折り合いをつけているようで、もしかしたら壊れていっているのかもしれません。岡林へ心を許していく彼の危うい感じに、こちらまで心をぐいぐいひっぱっていかれました。
終始ハードな世界観でBL萌とはかけ離れた雰囲気が漂いますが、実は岡林の行動の端々にかなり甘いものも混じっています。雪洋が岡林を「祐司さん」と呼ぶのが、明の言葉を借りれば本当にまいりました。最高です。
<関連作品>
・続編 (感想記事→箍冬-Cotoh- 水原とほる(著)/高緒拾(イラスト))
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