ヒトデナシは惑愛する 火崎勇(著)/小椋ムク(イラスト) 【小説感想】

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<登場人物>

 (攻)鴻巣縁(こうのす ゆかり)…古本屋店主。長髪黒縁眼鏡。

 (受)草刈希(くさかり のぞみ)…大学生。縁の店のアルバイト。20歳。


<あらすじ>

 幼い頃、夏休みは田舎の祖父のもとで過ごしていた希。田舎には近所の家に隔離されるようにして暮らす縁がいて、彼のところにこっそり通うことが希の楽しみでした。しかし、縁は「神隠しの子」と呼ばれており、希と親しくしていたことを知った大人たちに引き離されてしまいます。
 その後大学生になった希は、古本屋を営む縁と再会し、アルバイトとして雇ってもらいます。初恋相手のそばで恋心を再燃させる希でしたが、縁からは子ども扱いされてばかりで距離が縮まりません。


<感想>

 「ヒトデナシは惑愛する」(雑誌掲載)、「ヒトデナシは嫉妬する」(書き下ろし)の中編が2つ収録されています。表紙イラストと口絵から、街なかの古本屋で繰り広げられる穏やかな年の差恋愛物語をイメージしていたところ、意外にも日常に潜むファンタジーが主軸となっていました。かといって最初の印象が外れていたわけではなく、不思議な読後感です。

 都会育ちの希が、子供のころに田舎でこっそり会っていた縁さん。訳あってほぼ隔離状態だった縁さんとは一度離れ離れになり、希が大学生になってから奇跡的な再会を果たします。ふたりは最初からいい雰囲気だと思っていたら、縁さんは「ヒトデナシ」のために希とこれ以上距離を詰める気はない様子。

 そんな状態に焦れる希には、なんでも話せる相談相手・渡辺がいます。この渡辺が何かと頼りになる男なのですが……彼の登場シーンは常に謎の引っかかりを残す描写がされていて、毎回首をひねっていました。のちに渡辺の存在が希自身についての話をする上でキーになっているのがわかってくると、希と縁さんはハッピーエンドに向かっているのに勝手に切なさ膨らませてしまいました。

 最後まで脇キャラとしての立ち位置を崩さず、静かにフェードアウトしていった渡辺に思いを馳せると泣きそうになります。でももし彼の人生や想いを詳細に綴られていたら私は再起不能になったと思うので、これでよかったのだと思います(語ってしまいましたが渡辺の登場シーンはそれほど多くはないです)。

 後半は、前半では縁さんに伝えるところまでいかなかった希の秘密が掘り下げられていました。希の家庭環境がどうしてああだったのか、すべてに理由があったのがわかってすっきりしました。さらには縁さんの弟・誠さんも登場、誠さんとのやりとりを通じて、希が気持ちも明らかになります。

 希がこんな風に縁さんとの将来を考えていたのには驚きでした。恋人の身内ってちょっと厄介なことが多いと思っていたのが、希のような考えができればいつでも大歓迎できそうなのが新鮮でした。表立っては公言できない関係だからこそ、ですね。

 希と縁さんは二人だけでも生きていける気がしますが、あえて外と繋がろうとする姿勢にとても解放的な雰囲気を感じました。細かい伏線回収も効いていて、楽しかったです。


<オススメ要素>

・ヒトデナシ×一途な大学生。


<関連作品>

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