鳩の王 /河合あめ 【漫画感想】

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 人の姿になれる鳥と人間のお話が3組分収録されていました。
 表紙カバーの鳩の王もかっこいいですが、紙本のカバーを外すと鳩姿の王がこちらを見つめてきます。あまりの凛々しさにしばらく見つめ合ってしまいました。


『鳩の王』(表題作)

<登場人物>

 (攻)ノア…鳩の王。

 (受)鈴井優樹(すずい ゆうき)…大学生。ネガティブ。


 ミフネ…ノアとは別の場所に住む鳩王。


<あらすじ>

 暗くて人と話すのが苦手な優樹は、バイトをクビになった帰り道で野良猫に襲われていた鳩を助けます。
 その後、帰宅した優樹の部屋のベランダ(2階)に見知らぬ男が現れ、「仲間を助けていただいた礼を伝えるため」と言って部屋に侵入してきます。


<感想>

 自分でも情けない性格だと思っている優樹が、鳩の王・ノアと出会って鍛えられ、友達を作ったりはっきりものを言えるようになる、という成長のお話でした。
 当たり前に鳩を連れて電車に乗ったり大学に行ったりする描写がシュールでくすりと笑えます。

 途中までは、「仲間を助けてくれた恩人が己を卑下するとは助けられた自分達を卑下するのと同じだ!」というノアの指導の下、優樹がポジティブな性格になるまでがギャグ満載で描かれています。

 そこまでだとあまり恋愛要素が感じられないんですが、明るくなった優樹は、ついに大学の女の子に告白されます。それを断ってしまったことで、ノアは邪魔にならないよう優輝のもとを離れると告げてきます。それを必死に引き止める優樹。

 これであっさり想いは伝わるわけですが、なにせ相手は鳩の王。初心な優樹は一体どんな顔で人の交尾の仕方を教えたのでしょうか。

 後半ではもう1人(羽?)、鳩の当て馬が出てきます(「鳩の当て馬」って字にするとなんかおかしい気が)。このミフネがはじめはただただ嫌な奴なんですが、後に判明する彼の中身はかなり変わっていておもしろかったです。

 巻末の描き下ろしでは、好奇心旺盛なノアにまさかのリバ願望が。今回はギリギリ踏みとどまっていましたが、時間の問題な気もします。



『初恋スズメ~米と田舎と青い空~』

<登場人物>

 (攻)良穂(よしほ)…大学生。ダブり中。

 (受)すず…スズメ。


<あらすじ>

 田舎の祖父母の家に10年ぶりにやってきた良穂。そこで熱烈に出迎えてくれたのは、幼い頃によく一緒に遊んだ地元の青年・すずでした。


<感想>

 小さいころに田舎で一緒に遊んでいた友達が、実はスズメだったというお話。

 良穂は田舎が好きで性に合っているのに、母親が自分の田舎にコンプレックスがあるのもあって10年も足を運べなかったというのが切ないです。

 おっちょこちょいであっさり正体がばれてしまうすずですが、良穂への気持ちはとにかく一途で良い子です。ふくふくしたスズメの姿でも良穂大好きな感じが伝わってきてかわいいです。



『カラス男に気をつけて!』

<登場人物>

 (攻)クロオ…いじめられっこのカラス。人の姿のときは長髪。

 (受)シラトリ…区役所職員。道路や公園を管理している。


<あらすじ>

 公園でカラスに取られたシラトリの時計を、ボロボロになって取り返してくれたクロオ。それからたびたび一緒に食事をする仲になります。
 しかしシラトリの職場には、カラスの駆除や巣の撤去依頼が舞い込んでいます。そしてある日、クロオがカラスの姿でシラトリの前に現れます。慌てた様子のクロオは、近くの巣が撤去されそうだと助けを求めてきます。


<感想>

 区役所職員のシラトリくんの仕事ぶりがなんだかとてもリアルに感じられました。
 面倒見の良さそうなシラトリくんなら、お調子者のクロオさんと上手くやっていけるのではないかと思います。

 このふたりはてっきり攻受が逆だと思っていたのですが、シラトリくんが思いのほか可愛かったのでこれは嬉しい誤算でした。

 それからカバー下4コマでの「カラス飯」が衝撃でした。優しいシラトリさんもこの愛鳥ベントーは無理だったようです。



<オススメ要素>

・鳥が人になることに驚きはしても割とすぐに受け入れるシュールな世界観。
・鳥の皆さんかわいいです。
・肌色シーンではきっちり人の姿になります。



<関連作品>

・電子書籍(お試し読みができます。)
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