運命ではありません 一穂ミチ(著)/梨とりこ(イラスト) 【小説感想】

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<登場人物>

 (攻)門脇楡(かどわき にれ)…「ストレンジラブ」のアプリ開発責任者。29歳くらい。

 (受)御影澄(みかげ すみ)…「ストレンジラブ」の広報。少女漫画が好き。新卒2年目の23歳。


<あらすじ>

 マッチングアプリ運営会社「ストレンジラブ」の広報として働く、新卒2年目の澄。ある日突然社長室に呼び出されると、自社アプリにより「運命レベル」の相手が見つかったとして、同じ会社の開発担当の楡を紹介されます。同性であることに戸惑いを感じる澄でしたが、自分の開発したアプリのAIは間違えないと言う楡に押し切られ、お試しで付き合うことになります。


<感想>

 作家買いしている先生の御本はなるべく前情報を仕入れずに読みたい方なのですが、以前全く確認せずに本を開いてえらい目にあったことがありまして……。それでもおっかなびっくり読み始めたところ、今回は割と穏やかに読み終えることができました。びっくりするようなこともいくつか起こりましたが、最後にはすっきりとした気分と良い余韻が残りました。

 澄が広報として働く会社で開発しているのは、マッチングアプリ「ストレンジラブ」。ユーザーのデータをかなり詳細に入力してマッチングし、時には百万人にひとり級の運命レベルの相手が見つかることもあるようです。

 そんな自社アプリに澄も登録していたわけですが、ある日突然、澄に「運命レベル」の相手が見つかったとして、社長直々に楡を紹介されます。

 同性であることにはじめは全力で拒否する澄でしたが、アプリのAI開発責任者である楡に丸め込まれ、お試しのお付き合いがはじまります。

 このいかにも理系で体温が低そうで普段は綺麗な顔をしている楡がなかなかの曲者で、頭はいいのに変なところで常識が通じず、澄はとても振り回されます。少女漫画好きで乙女な心を持ち合わせている澄は、そんな楡を無下にできないどころか、次第に惹かれていきます。

 澄と楡のそれぞれの家族も皆キャラの濃い人が多く、少しミステリー要素を加えてくれています。澄の幸せそうな妹夫婦があまりにも理想像すぎて最初だけ苦手に感じてしまいましたが、意外にも現実的な面を見せてくれたところで印象がガラリと変わりました。

 書き下ろしの『それでも、運命ではありません』は、ふたりが恋人になってから半年以上が経過したころのお話でした。楡の頭の中は私には想像もつきませんが、彼は彼なりに澄を好きな気持ちを持っていて、懸命に澄のことを想っているのがわかって嬉しくなりました。


<オススメ要素>

・きっかけが「運命」の恋。





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