血のファタリテ 水原とほる(著)/兼守美行(イラスト) 【小説感想】

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<登場人物>

 (攻)大喜多善司(おおきた ぜんじ)…大喜多組組長の息子。

 (受)倉木元耶(くらき もとや)…高校生。


 真田秀晃(さなだ ひであき)…僧侶。僧侶名は秀晃(しゅうこう)。善司の幼馴染。


<あらすじ>

 母親を交通事故で亡くしてしまった高校生の元耶。そこで初めて、自分の母の実家がヤクザであったことを知ります。
 両親は駆け落ちだったため、激怒した母方の伯父・大喜多組組長のもとへ連れて行かれた元耶。そこで父を人質に取られ、元耶は組長の息子・善司に引き取られることになります。


<感想>

 突然の不運によりヤクザのもとで囚われの身となる主人公……現実だったらとても怖いですが、BLファンタジーではいつでも大歓迎です。中でも水原先生のヤクザ攻はわりと容赦がないところに心をつかまれます。

 ある日突然母が交通事故でなくなってしまったのをきっかけに、母方の実家(ヤクザ)に連行されてしまった元耶。そこで父を人質に取られ、元耶は組長の息子・善司のもとで暮らすことになります。

 善司は元耶の母親・公子への想いをかなりこじらせていて、元耶への態度にも歪さが見られます。元耶に手を上げて無理矢理犯したかと思えば、急に抱きしめてみたり。ヤクザの息子として苦労の多い子供時代を送り、当時の善司にとって母親代わりだった公子の息子に対し、善司の心中も複雑なのが伝わってきます。

 そんな善司は時折元耶へのあたりが見境なくなることがあります。そんな善司をコントロールしてくれるのが、善司の幼馴染の秀晃。この秀晃がまたいいキャラでして……。秀晃は美貌のお坊さんなんですが、善司の仕事も手伝っていて、その心も全力で善司へ向いています。なのでいつでも善司の味方です。元耶に手を上げる善司を制止するのも、結局は善司のため。静かな佇まいにとんでもない激情を隠しもっていそうな、底の知れないお人です。

 そんな秀晃と元耶がふたりきりになったときの微妙な空気がたまりません。このふたり、実は善司のいないところで一線を越えてしまいます(秀晃×元耶)。これがなんといいますか、元耶によれば傷の舐め合いに近いもの、のようで。そこにはいないけれど互いに同じ人を想って体を重ねるってすごく萌えました。善司、秀晃、元耶の3人は非常に絶妙な関係性を築いていて、私にとっては他に類を見ない作品だと感じます。

 最終的には善司と元耶がハッピーエンド、そしてそれを見送る秀晃という構図に落ち着きます。3人で仲良くしてもらう方法はないかと勝手な妄想が捗るものの、でもそうすると善司が真ん中になってしまうのかな、と考えると実現は難しそうです。


<オススメ要素>

・ちょっと暴力的な王子様(ヤクザ+美貌の坊主のおまけつき)と不運な受のシンデレラ・ストーリー(あとがきより)。





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