監禁生活十日目 水原とほる(著)/砂河深紅(イラスト) 【小説感想】

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<登場人物>

 (攻)高井戸清吾(たかいど せいご)…犯罪プロファイラー。犯罪学の天才。

 (受)此村実洋(このむら みひろ)…家出してクラブで働いている。18歳。


 緒方(おがた)…刑事。清吾に捜査協力を依頼。

 市井美也子(いちい みやこ)…清吾の部屋の雑事をこなし、実洋の世話もしている。


<あらすじ>

 家庭環境に耐えられず17歳で家出し、東京のクラブで働いている実洋。たまたま店を訪れていた犯罪プロファイラーの清吾に気に入られ、後日彼の部屋に突然拉致されます。手錠で繋がれ監禁された実洋でしたが、いつまでも諦めずに抵抗を続ける実洋に清吾の興味は増すばかりです。


<感想>

 たしか(仮)タイトルが「サイコ・ラブ」だったと記憶しているこちらの作品。その名の通りサイコパスもしくはそれと紙一重の人たちがわんさか出てきます。一応主人公の実洋が一番の常識人、という立ち位置のようですが、それもなんだか怪しく思えてくるほどに周囲の人間達の影響力が強く、読んでいてクラクラしてきました。

 不憫な受をいきなり拉致監禁、という展開は私の大好きなパターンでして(なんかすみません)冒頭からわくわくが止まらず、しかも実洋にあらゆる方面から圧をかけてくる清吾、緒方、美也子の3人の言葉に振り回されながらもページを捲る手が止まりませんでした。もうヘトヘトです。引き込まれすぎて疲れました。

 物語は実洋の視点で語られるために、突然自由を奪われたあげく体までいいようにされてしまう状況はどこまでも不憫で、清吾については非情なサイコパスに見えます。けれどタイトルにもなっている「監禁生活十日目」、ふたりの関係への見方がそれだけではなくなっていきました。

 結果から見れば優しさに溢れた監禁生活だったように思えてくるのがちょっと怖くなります。自分も彼らの思考に少なからず毒されているのでは……?と考え始めるとドツボに嵌りそうです。美也子の「サイコパスって感染するの」の一言が忘れられません。

 後半は「レインマン」と呼ばれるサイコパス犯罪者をめぐる事件を追う展開になります。このレインマンが想像を絶するホンモノだったために、それに比べたら清吾はまだかわいい方なのではと思えてしまいました。あ、でも緒方は完全にそっちの人だと思っています。美也子の想いが届く日が訪れるといいような、よくないような。

 先生があとがきで「内容の半分は……」とおっしゃっていることに少し安堵を覚えつつ、この先のふたりの暮らしまで気になってしまいました。常識とは何だったかわからなくなるような言葉に翻弄され、大変楽しい読書時間を過ごせました。


<オススメ要素>

・サイコパスだらけの監禁生活。


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