参加作家様(敬称略)
<著者>
爺誤/noel/桃瀬わさび/匠野ワカ/松千代/コオリ<イラスト>
かじったっけ/吉杜玖美<感想>
2020年10月31日初版発行、紙本はR18指定です。1冊すべて触手で埋め尽くされた夢のような小説アンソロジー、手に取らずにはいられませんでした。収録作品は全部で15、中には観察日記や絵本風のものもあって最後まで飽きません。たくさんの作家さんが参加されていらっしゃいますが世界観が統一されていて、繋がりが感じられるのも楽しかったです。
以下、気になった作品の感想です。
『オジギミロク』 noel
夏休みの観察絵日記風で、この他のほぼすべての作品の根底に流れている歴史のようなものを感じるお話でした。歴史というかこれはもう事件だと思いますが、かわいい絵日記のおかげで恐怖を感じない……なんてことはなく、より怖さが増しておいででした。『ミミックテンタクロウス』 匠野ワカ
生物系触手+獣医さん×学生のちょっとおバカでハッピーなお話でした。パンデミック中に大学に進学、苦労人の学生・基也は入居したアパートで寝込みを触手に襲われるものの、触手を保護し動物病院に連れて行ってあげる優しい人。そこにいらっしゃった獣医の先生も巻き込んでそれはそれは大変な事態に……。おふたりは完全にその場の勢い任せに見えたのですが、気持ちは本物だった様子。そういえば最中もちょこちょこ互いを思いやる言動があったりしたような(でも最終的には全部流されていたのがとてもよかった)。触手が恋のキューピッドになってくれるパターンでした。しかもめでたくふたりのペットになった触手の名前がかわいい。これからもお三方で仲良く過ごしていってください。
『シャザ・テダ・ングル』 noel
初めてお目にかかったタイプの触手でした。一応生物系?になるのでしょうか。触手を人体に宿すだけでなく、継承していくというのはなんだかすごい。しかも基本は人と共生しているため、宿主の意識が及ぶのもポイント高いです。触手の方にも意志があるらしく宿主とともに欲を向けられる受のハルは大変そうでした。でもそのおかげで攻のシャザからは人一人分以上の愛を感じます。ハルはそんな触手ごとあっさり受け入れてくれたし、シャザもじっくりゆっくり落とした甲斐はあったのではないでしょうか。
『検体番号108 識別名称 猩々(Sho-jou)』 松千代
アンソロの最後を飾るのにふさわしい、規模の大きなお話でした。目次では「危険な触手」に分類されている上、中の表紙にはカバー下にもいらっしゃるあの生物(?)が。内容も、ここに至るまでに収録されていたすべての作品がこちらに繋がっていくと言っても過言ではない気がします。というのも舞台は触手の研究施設で、登場人物はそれぞれが腹に一物抱えていそうな研究員さんたち。さりげなく彼らの過去が明かされるたび、他作品との繋がりを感じて驚かされていました。
触手についても、これまでの展開からしたらそんなこともできそう、と妙に納得してしまう説得力。私自身もアンソロ1冊を読むうちに完全に洗脳されておりました。
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