<登場人物>
(攻)ランスロット…キャメロット王国の騎士。
(受)海老原樹里(えびはら じゅり)…アーサーの妃。高校生。アーサーの子どもを身ごもっている。。
アーサー・ペンドラゴン…キャメロット王国の王。
<あらすじ>
樹里に拒絶されたランスロットは、自分の想いは封印し、王国とアーサー、樹里を守ることを生きる指針としていました。しかしひたすらに樹里への気持ちに蓋をしてきたランスロットはそこをモルガンにつけこまれ、樹里の前で錯乱状態に陥ります。
<感想>
『少年は神』シリーズのアナザーストーリーで、こちらはランスロット編のようです。シリーズ5作目の『少年は神の子を宿す』で樹里とマーリンが未来へ渡るシーンがあり、今作はどうやらそちらのルートのお話だと思われます。本編の方でも未来が凄惨を極めていた描写があった通り、王国は崩壊の危機、アーサーはおらず、ランスロットとクロもさらわれています。
物語冒頭の時点で樹里はアーサーの子がお腹にいて、王妃の立場になっています。ランスロットは樹里にはっきり拒絶されているので、自分の想いには蓋をすると決意していました。ですが、樹里への想いを捨てきれずにいたところをつけこまれたランスロットは、モルガンの術により錯乱。この事態でアーサーが死んでしまい、激怒したマーリンによってランスロットは処刑されそうになります。
そこに現れたモルガンによりランスロットとクロがさらわれ、怒りに囚われたマーリンはランスロットを追って王国を離れます。樹里は魔物に囲まれた王国の中で残された人々と暮らし、どうにかランスロットとクロを助けられないかと画策しています。
本編の方でちらりと出てきたときもそうでしたが、アーサーもランスロットもクロもマーリンもいなくなった王国は崩壊の一途を辿っています。希望の見えない重苦しい展開ですが、なんとか活路を見出そうとする樹里はひとりでも強い子でした。樹里とマーリンが過去からやってくるシーンも少し描かれています。
八方ふさがりの中でも諦めず、ユーウェインとマーハウス、妖精王の力を借りてランスロットとクロの救出に向かう樹里は逞しく、ファンタジー小説の醍醐味を味わうことができました。そして今回はランスロット編の1巻だしBLっぽい雰囲気にはならないかな、と感じ始めた終盤、ランスロットがやってくれました。やはりこちらはBL小説、ありがとうございます。
王国にいる自分の未来が見えなくなった樹里は元の世界に帰ろうとするのですが、それを知ったランスロットは樹里への気持ちが暴発。ほぼ無理矢理な形で樹里を襲ってしまいます。
ここからのランスロットが凄かった……。これまで押しとどめていた想いが決壊したランスロットはとどまるところを知りません。こういう静かで高潔だった人ほど一度本性を現したら怖いのかもしれません。そして妙に空気を読むクロ。クロが邪魔をするかどうかが、これがいい方向に進むのかどうかの私の中での判断基準になりつつあります。
最後に、あとがきによればこちらのアナザーストーリーは3冊を予定とのこと。次からは明るくするとの予告もあり、新たな楽しみが増えて嬉しいです。
<オススメ要素>
・『少年は神』シリーズランスロット編1巻。
<関連作品>
・シリーズ
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