逢いては染まり 沙野風結子(著)/笠井あゆみ(イラスト) 【小説感想】
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<登場人物>
(攻)津雲…クラブキャスト
有岡…洵の友人(?)
(受)倉科洵…アナウンサー
柏林鎮…極秘会員制クラブオーナー
如月…柏林の秘書
<あらすじ>
人気若手アナウンサーの倉科洵には誰にも言えない秘密があります。それは極秘会員制クラブの客として男を買い、薬を使って自らの身体を麻痺させた状態で身体を重ねていること。そうしないと自分をリセットできず、眠ることもできなくなってしまいます。
しかし、ある日クラブから派遣されてきた津雲というキャストに倉科の正体がバレてしまい……。
<感想>
まず表紙のみから受けた印象で、3P?三角関係?寝取られ?……あたりを想像していたのですが、どれもあてはまるようで、厳密にはどれもぴったりとはあてはまらない、というカテゴライズに大変迷う作品でした。沙野先生のあとがきにも、『変形三角関係(いや、四角関係?)』とあります。
内容は、それぞれのキャラクターの過去からの前進と成長が描かれています。
倉科は過去に大切な恋人を喪っていて、新しい恋をすることは亡くなった恋人への裏切りだと感じています。
倉科は最愛の人の死にものすごくダメージを受けていて、いつも危なっかしいというか、ふらりと元恋人のあとを追ってしまいそうな儚さを漂わせています。これが直接的な表現はほぼないというのに、倉科の思考や言動からそれが伝わってくるのです。時々泣きそうになりました。
それをずっと近くで見てきた数視が、どうにか倉科を引きとめようと自分が倉科を支える決心をするのも切ないながら頷けます。それ以外方法がなかったんだろうと。
一方で攻の津雲もいろいろと訳ありです。ただ、倉科ほどは詳細が語られない分、津雲についてはただ単純にかわいそうとしか思えず……。柏林さんが怖すぎるせいかもしれません。でも彼の同僚たちのこともあって、「前進と成長」に踏み出していく姿は若さを感じられてよかったです。名前もかわいい。いい年下攻でした。
お話を最後まで読み終わってからもう一度表紙を眺めてみると、このイラストはとても秀逸なのではないかと思えてきました。特に有岡さんが口もとだけがわかる感じで表現されていることに思わず震え、「笠井先生はやっぱりすごい……」とあまりの感激に語彙力のない言葉が漏れ出ました。
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