緑土なす 祝祭の残り香にひたる みやしろちうこ(著)/user(イラスト) 【小説感想】

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<登場人物>

(攻)レシェイヌ…今世王。異能を持つ王族。王朝最後の王。金髪。

(受)ラフォスエヌ…足弱。アシ。今世王の異母兄。片足が不自由で、杖をついて歩く。黒い短髪。


<あらすじ>

 無事に結婚式を終えた足弱は、近しい人々へお礼の手紙を準備し始めます。しかし膨大な量になってしまうため、自分の印章を作れないかと思いついた足弱。王族の印章に妥協はできない灰色狼たちを巻き込み、印章制作は足弱の予想を超えどんどん大掛かりになっていきます。


<感想>

 『緑土なす 黄金の王と杖と灰色狼』、『緑土なす きみ抱きて大地に還る』、『緑土なす きみに捧げる花の名は』、『緑土なす 天から降る黄金の花弁』に続くシリーズ5作目です。

 結婚式と初夜を終えた今世王と足弱のその後と、実はほぼ同時に行われていた灰色狼たちの結婚式、ワンさんの結婚式裏話などの短編と、大長編「もし、西の果ての山でふたりが出会っていたら」が収録された番外編集でした。

 前半の結婚式にまつわるお話は、まさに「祝祭の残り香にひたる」という雰囲気でどれも微笑ましい気持ちになりました。中でも足弱の印章作りがお気に入りです。足弱が自分や灰色狼たちどちらの気持ちも大事にして作られた印章。次第に大掛かりになっていくのも、みんなが互いの考えを尊重し合った結果なのが伝わってきます。完成した手紙を受け取った皆様の反応も、それはもう、といった感じでこちらまで嬉しくなりました。

 それから自分でも驚くほど楽しく読めたのが、後半の「もし西」。タイトル通りのIF話ですが、出会い方が違えばこれほど穏やかに関係が進んでいたのかとなんどもしみじみとさせられました。

 もちろん、ドラマチックに突き進んだ本編があってこそ楽しめたのだと思います。血族しか愛せない王族の兄弟としてではなく、なぜか惹かれ合ったふたりがゆっくりと関係を深めていく様子に、真実がどこまで明らかになるのか、ふたりがどのあたりまで進むのかずっとドキドキしていました。穏やかな話なのにふたりの行く末が気になって、最後の最後まで目が離せませんでした。

 そして幕引きがとても感動的。まるでどこか遠い国の歴史ドラマを見せてもらったような、良い充実感に満たされています。


<オススメ>

・シリーズ5作目。
・番外編集第2弾。


<関連作品>

・電子書籍(お試し読みができます。)

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・シリーズ

 
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