猫の王国 犬飼のの(著)/yoco(イラスト) 【小説感想】
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<登場人物>
(攻)イズミ…タンザナイト騎士団の現役騎士。ユラの指導教官。
(受)森本由良(もりもと ゆら)…高校1年のとき、猫を助けて川で溺れた。亡くなって猫人になってからは「ユラ」と名乗っている。
<あらすじ>
増水した川に流されてしまった子猫を助けたものの、そのまま溺れて亡くなってしまった由良。目を覚ますと、人の姿をしていながら獣耳に3本の尾を持つ猫又に迎えられます。猫又の話によれば、生前に猫を助けた由良は「猫の王国」に迎えられ、猫耳と猫尻尾のある「猫人(ねこびと)」になり、さらにここで騎士になれば願いを1つ叶えてもらえるといいます。
自分の死因が自殺になっており、それが親友の泉貴洋のせいになっていると知った由良。誤解を解いて貴洋を救うという願いを叶えてもらうため、騎士学校に入学します。そこでイズミという現役騎士が由良の教官になりますが、彼はどことなく貴洋に似た風貌をしていました。
<感想>
読んでいる最中は、貴洋はなかなかにひどい人だし、由良もそこまでされたのにどうして自分ばかり責め、貴洋を救うことしか考えられないのか……と疑問が拭えませんでした。
けれど一通り読み終わって話全体が見えた上でもう一度考え直してみると、とても切なかったり、身につまされる思いになります。ついわが身を振り返ってしまいました。
相手とちょっとした諍いを起こしてそれをこじらせたまま、もう二度と会えなくなる……というのは、意外と現実でも起こりうる話なのではないかと思います。若いが故の未熟さから自分本位に好きな相手を傷つけてしまい、それが取り返しのつかない事態に発展してしまったけれど、もしやり直せるチャンスが巡ってきたとしたら。誰よりもはやく騎士になったというイズミ。そこに彼がどれほどの後悔を背負ってきたのかかが伝わってきました。
由良の目的は達成され、イズミともめでたく結ばれたわけですが、どんなに幸せでもそこは猫の王国という名の天国。どれほどがんばろうと由良は死者であることが、ふたりが今幸せであるほどに切なく感じます。異世界ファンタジーではあっても、異世界「転生」ではないのですよね。
冷静に向き合ってしまうととても悲しい印象になってしまいますが、そこをとてもマイルドにし、萌要素を詰め込んでくれているのがイズミとユラを含む猫人さんたちの猫耳猫尻尾です。特に尻尾は感情のままに動くようで、どの猫人さんもかわいいです。びっくりしたときに思わず「ニャッ」と声が出てしまうのもなんともかわいい。yoco先生のイラストも1枚1枚が絵画のようです。尻尾のかわいらしさが存分に発揮されています。
<オススメ要素>
・猫耳猫尻尾。
・異世界ファンタジー。
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