半壊の花 /早寝電灯 【漫画感想】

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 早寝電灯先生のデビューコミックスです。収録作品は全部で4作品、それぞれに描き下ろしがあります。カバー下にはキャラクターたちの持ち物が描かれていて、高校生の鞄が3つ並んでいるのを見て涙が出てしまいました。



『半壊の花』(表題作)

<登場人物>

 (攻)瑞穂遥(みずほ はる)…ハル。双子の兄。

 (受)芦原豊樹(あしはら とよき)…トヨ。唯一双子を見分けられる。


 瑞穂悠(みずほ ゆう)…ユウ。双子の弟。


<あらすじ>

 高校時代の同級生・ユウが交通事故で亡くなり、葬式に訪れた豊樹は、そこでユウの双子の兄・ハルと再会します。
 両親ですら見分けられない双子・ハルとユウを唯一間違えなかった豊樹。高校時代は3人で仲良くしていたはずが、卒業と同時に双子とは連絡が取れなくなっていました。


<感想>

 開始1ページ目からお葬式のシーンで始まります。なんですが久しぶりに再会したトヨとハルの会話がどこか淡々としていて、不思議と重苦しさは感じませんでした。

 そこからすぐに高校時代の回想に入り、双子とトヨとの出会いから3人仲良く青春を送っていたのがわかります。そして後編に入ると、時間は再び今へ。双子がどうしてトヨと連絡を絶ったのかがハルの口から語られます。

 ハルが真実を打ち明けたあと、ユウが起き上がった(ように見える)シーンは何度見ても涙が出ます。ユウが髪に花を引っかけているのが、これがまるで本当のことのようで……次に待ち受ける現実との対比に胸が痛くなりました。さらにはユウの描いていたサインに追い打ちをかけられ、最後にはやっぱり涙腺が崩壊しました。



『扉の向こうの凪いだ海』

<登場人物>

 凪(なぎ)…大学生。

 緑(みどり)…アパートの大家。


<あらすじ>

 アパートの大家をしている緑は、子供の頃からお化けが怖いことを誰にも言えずにいます。
 緑のアパートに入居している大学生の凪は緑にとても懐いていますが、学祭のお化け屋敷に緑を誘っても断られてしまいます。


<感想>

 怖がりな大人の緑に対し、いろいろアピールしているのにさっぱり気づいてもらえない凪がかわいかったです。年下の凪が緑のことを「あなた」と呼ぶのが気に入っています。

 緑の恐怖体験の真相もわかり、すっきり優しい雰囲気のいいお話でした。



『嘘つきたちの食卓』

<登場人物>

 「おまえ」…料理人。

 「俺」…物書き。インドア。


<あらすじ>

 「俺」と、近所のレストランの料理人とは、デリカシーのない関係。けれど「俺」がそんな関係を続けているのは、彼女がいるらしい料理人への強がりで……。


<感想>

 このコミックスのどの作品も好きなんですが、中でもこちらが一番のお気に入りになりました。

 くどかれたと思った直後に、相手に彼女がいたことが発覚、それ以来ほとんどセフレのような関係を続けてきたふたり。「俺」は強がって平気なふりをしながらも心の中では切実な気持ちを抱えているのに、それが自堕落な性格のモノローグと混ざってなぜかおもしろく感じてしまいます。

 描き下ろしでも、表面上はドライなようで相手のことが大好きなことがわかるやりとりが癖になりました。このふたり、ずっと見ていたいです。



『稲穂に帰る道』『稲穂につづく道』

<登場人物>

 間宮櫂(まみや かい)…東京の大学へ進学が決まった。

 水落幸助(みずおち こうすけ)…地元に残るつもりだった。


<あらすじ>

 うわさ話は一瞬で広がるようなせまい田舎で、高校生の櫂と幸助は周囲には秘密の恋人でした。高校卒業と同時に、櫂は東京、幸助は地元に進学が決まり、ふたりは離れてしまいます。


<感想>

 気持ちははっきり互いへ向いているのに、いつでも会えた田舎から櫂だけが出ることになり、会えない遠さに耐え切れずに別れを選んだ櫂と幸助。ふたりが周囲に内緒でこっそり恋人として過ごしていたときの回想が素敵な雰囲気でいっぱいでした。

 秋、自分達を多い尽くすほどに背の高くなる稲穂に囲まれて……のシーンは田舎だからこその子供らしさとあたたかさを感じ大変印象に残りました。

 後半は、一度離れてしまったふたりが大人になってからのお話でした。櫂は変わらず東京で働いていて、幸助も上京してきていました。先に櫂の存在に気がついたのは幸助で、幸助は自分の正体を明かさずに櫂をメールのやりとりをするようになる、という展開に。

 大人になってもどこまでも純粋なふたりの様子がそれぞれのメール文面から伝わってきます。物語はふたりが再会したところで終わるんですが、それが心の底からよかったと思えるすごくいいお話でした。



<オススメ要素>

・魅せる雰囲気の短編集。



<関連作品>

・電子書籍(お試し読みができます。)

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