シンデレラ王~罪を抱く二人~ 犬飼のの(著)/笠井あゆみ(イラスト)
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<登場人物>
(攻)エラルド・ジェームズ…継母と義兄の下で不遇な生活を送る平民。
(受)リチャード・シャロン・アシェンプテル…アシェンプテル王国の第二王子。目に障害がある。
ヴァリウス・アンリ・アシェンプテル…シャロンの兄。次期国王。
<あらすじ>
エラルドは平民ではあるものの、成功した父と聡明な母とともに幸せに暮らしていました。ところが、母、そして父が亡くなり、残されたエラルドは継母と義兄によって不遇の生活を強いられます。
大切にしていた実の母の形見を継母に売り飛ばされたエラルドは、絶望のあまり落馬して自害しようとしますが、死に切れずに苦しんでいたところを美しい少年・シャロンに助けられます。目がよくないシャロンが王族であると知ったエラルドは、貴族のふりをしてシャロンとの逢瀬を続けます。
<感想>
まず、攻のエラルドがシンデレラであるというのが意外でした。このエラルドがいかにも攻らしい立派な体格と容姿をしていて、それ故に家庭では容赦ない仕打ちに合っています。こういう、主人公が辛い目に合うところに童話っぽい雰囲気を感じます(私だけかもしれませんが)。
エラルドとシャロンは中盤には想いが通じ合い、あとはふたりの間にある障害をどう乗り越えていくか、というお話になっていきます。
その主な障害となるのが、シャロンの兄、ヴァリウス。彼は兄としてシャロンが好きなことはわかるのですが、何を考えているのかわかりません。彼の最終判断については、私は何もそこまでしなくても……と思いつつ、これまでに残虐なこともしてきたし仕方ないのかな……とも考えたり。キャラクターの心情を考えると、それぞれにちょっとずつ悲しい気持ちが残ったのは否定できません。
ストーリーは大変おもしろく、変わったプレイも見られるし謎や難題はすべてすっきり解決、さすが犬飼先生!という素敵な作品でしたが、人によっては地雷になりそうな要素があるのも事実なので注意した方がいいかもしれません。
エラルドが不遇時代に継母との関係を強いられていたり、ヴァリウスがシャロンの犬を撃ってしまったりと胸の痛むシーンがあり、特に後者はなかなかの衝撃でした。
お話を読んでいた途中から急に気になりだしたのが、意味深な本編タイトルと、目次で目に入っていた収録作品のタイトル。これがものすごいヒントになっていたんですね。そして最後まで読み終わってから考えさせられるサブタイトル。「二人」の意味するところが、読む前と読んだ後では印象が変わっていました。
官能童話BL3作品目ということですが、これだけで楽しめました。出版社ペーパーでは他の作品のキャラクターが登場するので、おそらく世界観が同じ、ということだと思います。
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