落果　/akabeko　【漫画感想】

akabeko

2018.09.302024.11.06

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落果 (on BLUEコミックス)

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akabeko 祥伝社 2018-02-24

　表題シリーズで２作品、加えて中編が１作品収録されていました。表紙と裏表紙にいるのは『落果スピンオフ』のおふたりです。
　こちら帯の煽り文が刺激的でして。表には「二度と女抱けない身体にしてやるよ」、裏返せば「心が勃起する短編集。」、……どこにも逃げ場がありません。

『落果』（表題作）

＜登場人物＞

　（攻）大倉（おおくら）…りんごのボディーガード。

　（受）りんご…ナンバーワン・コールボーイ。

＜あらすじ＞

　綺麗な顔が売りのナンバーワン・コールボーイのりんご。しつこい客の予約を断ったために恨みを買ってしまい、顔に傷をつけられてしまいます。
　ひどい傷のために客がつかなくなったりんごは、店を辞めることに。自棄になっていたりんごを助けたのは、ボディーガードをしていた大倉でした。

＜感想＞

　勝ち気な性格故に敵の多いりんごさん。頼りないボディーガードの大倉に向けてかけた言葉が、一見ひどいことを言っているようなのになんだかすごく心に響きました。りんごさんにとっては何気ない一言でも、これが大倉の世界を変えてしまうほどの力があったというのに納得です。

　大倉はりんごさんに惚れているのに本当にひとりで帰らせてしまったことがずっとひっかかっていたんですが、そこは後半で大倉が見せたヤンデレが解決してくれました。あ、そういうお考えだったのですね、と。

　綺麗な顔に傷が残り、しかも表情にまで影響していることがかわいそうで仕方なかったんですが、巻末の描き下ろしでの訛りに訛ったりんごさんにほのぼのしました。本名もあわせてかわいらしかったです。

『落果　スピンオフ』

＜登場人物＞

　（攻）店長…男性向け風俗店の店長。元はタチ専門のボーイだった。

　（受）レオ…ノンケホスト。

＜あらすじ＞

　風俗店で働く「店長」は、店のボーイがホスト遊びをしていると聞いて、数年前自分がボーイをしていた頃に相手をしたノンケホストのことを思い出します。
　数年前、罰ゲームで店長のいた男向け風俗店に連れてこられた新人ホストのレオ。ホストクラブのガラの悪さに辟易していた店長は、ウサ晴らしのために一晩レオの相手をしますが……。

＜感想＞

　表題作のふたりが働いていた店の店長のお話で、こちらの方が前後編あって長いです。前編が主に数年前、後編が現在となっていました。

　新人イジメの罰ゲームで、ノンケなのに男向け風俗店に連れてこられたレオ。レオのいるホストクラブは以前店長がいた店の近所で、店長は普段からイラついていたようです。

　そして店長の八つ当たりの犠牲になってしまったレオは、しっかりしこまれてしまいました。ここ、準備から本番まで詳細で濃いです。このときの店長については後からわかるんですが、ですよね……と頷きながらレオへの同情がさらに増しました。

　その後はレオへの罪悪感からか店長の方がイケない身体になってしまい、ボーイを辞めたといいます。数年後の再会でレオに迫られ、久しぶりの仕事をした店長はブランクを感じさせない凄まじさでした。

　終始淡々とした印象の店長、レオがどんどんかわいくなっていくのに対しちょっと表情が緩んでいるように見えるのがたまりません。このふたり、末永く一緒にいてほしいです。

『君のいる家』

＜登場人物＞

　（攻）万才（ばんざい）…在宅プログラマー。バツイチ。４０歳。

　（受）南千秋（みなみ　ちあき）…家政夫。元鳶職。長髪。

＜あらすじ＞

　知り合いの紹介で家事代行サービスを申し込んだ万才。家政夫としてやってきたのは長髪の若い青年・千秋でした。千秋のあまりの若さに不安になった万才でしたが、意外にも仕事の早い千秋が次第にかわいく見えてきます。

＜感想＞

　こちらも前後編です。ここまでの表題シリーズが夜の世界のお話だったので、こちらで一気に明るくなった印象を受けました。四十路の万才が呼んだ家事代行サービス、やってきた千秋は彼の父親が万才と同じ歳だというので、すごく若いのがわかります。

　かなりの歳の差があるのがふたりにはいい方に作用したようで、万才には千秋がかわいく見えていて、千秋からは一緒にいると安心すると思われています。父親が亡くなっている上にどうやらトラウマ持ちらしい千秋には、万才くらいの男性がぴったりだったのかもしれません。

　ちょっと親子っぽい雰囲気があるかな、とも思えるんですが、意外にも万才さんの方が肉食系だというのが微笑ましかったです。

＜オススメ＞

・風俗から家政夫まで、ふり幅の広い短編集。

＜関連作品＞

・電子書籍（お試し読みができます。）