愛を与える獣達 無骨な熊と王者の獅子と異界の『番』 茶柱一号(著)/黒田屑(イラスト) 【小説感想】

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<登場人物>

 (攻)ゲイル…熊族。寡黙で無骨。

 (攻)ダグラス…獅子族。王族の生まれ。

 (受)森羅親之(しんら ちかゆき)…チカ。医者。40歳で異世界に転生し、少年の姿に。


<あらすじ>

 現代日本で医者として働いていたチカは、仕事からの帰り道で突然異世界に飛ばされます。そこでなぜか少年の姿になっていたチカは、獣人が大半を占める世界で貴重なヒト族として捕らえられ、奴隷にされます。
 辛い奴隷生活の末にボロボロになった状態で売りに出されていたチカは、偶然通りかかったゲイルに買われ保護されることに。ゲイルと暮らしているダグラスと共に手厚い看護を受け回復したチカは、ふたりから番として伴侶になってほしいと頼まれます。


<感想>

 「ムーンライトノベルズ」に掲載されている作品が加筆修正され、紙書籍化されたものです。1~51話、閑話、書き下ろしの『セバスチャン大いに戸惑う』が収録されています。

 昔からweb小説好きな私にとっては非常に読みやすい文章でした。基本的にキャラクターの一人称で進み、はじめのうちは語り手がコロコロ変わるために何度か確認が必要になったものの、文章自体は大変私好みで、文が「合う」という感覚を久しぶりに味わわせていただけました。ただし元々はweb小説、商業とは異なる文体とノリであることはたしかだと思うので、電子版やムーンライトノベルズでのお試し読みはオススメです。

 突然の異世界転生、そこで不憫な境遇を強いられた受が助けてくれた攻に溺愛され……というその手の話が好きな人間にはたまらない王道展開、そこにさらなる楽しさを加えてくれているのが、チカが現代日本で医者をしていたという設定。転生前は40歳くらいだったらしく、その知識や経験に説得力があります。

 転生後の見た目は10代の少年、しかし頭脳はおっさ……いえ、ベテラン医師ってどうなんだろうと購入前は尻込みしたものでしたが、これがびっくりするくらいすんなり受け入れることができました。チカが周囲からの扱いに驚きつつも、大人らしい落ち着いた反応をしているために、読んでいて疲れないのかもしれません。そういえば精神年齢が40代以上のキャラクター視点の小説って、これまでほとんど読んだことがない気がします。

 前半はチカが奴隷から解放され、ゲイルとダグラス、その他の個性的なキャラクターと絆を深めていき、後半はチカが周囲から溺愛され幸せに暮らしている様子が描かれていました。この後半部分が人によっては単調と感じるかもしれないんですが、不憫だった受がのんびり幸せを満喫する姿をいつまでも見ていたい私にとっては至福のときでした。チカの作る料理が身近なものなだけにイメージしやすく、本当においしそうでお腹が空きました。

 あとはチカが医師としての知識を活かした能力持ちの虚弱体質、というのが自分でも笑ってしまうくらいにツボでして。もとが医者という設定がこれほどまでに効いてくるとは驚きです。ゲイルとダグラスの状態がわかったあたりからこれは……とワクワクがとまらず、チカが命をかけてふたりのために術を施したときはひとりで萌え転がりました。そしてチカには申し訳ないですが、呪いもいい仕事をしてくれていました。

 書き下ろし『セバスチャン大いに戸惑う』では、セバスチャンから見た3人の様子が綴られています。周囲から見ると、ゲイルとダグラスのチカへの執心ぶりがそれはもう大変なことがわかります。むしろチカ視点からはここまでのものとはわからなかったので、チカはやはり年上で、大人だから受け入れられるのかな、と思えました。チカの視点から外れることで、よりチカの健気さに想いを馳せることになったいいお話でした。


<オススメ要素>

・異世界ファンタジー、シリーズ1作目。
・溺愛攻×不憫健気受。


<関連作品>

・電子版(お試し読みができます。)

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