ケモノ耳、尻尾、角などを持つケモノさんたちのお話が４作品収録された短編集でした。後半の２つはオメガバースで、カバー下には先生のあとがきが２Pあります。
『一角獣は淫らな檻に啼く』（表題作）
＜登場人物＞
（攻）イスワド…サハルの元従者。
（受）サハル…白いレイヨウ。男娼「一角獣のアビヤ」。元王子。
＜あらすじ＞
従者のイスワドが王を裏切ったことで、王子だったサハルは「一角獣のアビヤ」として男娼をしています。上客に抱かれたあとのサハルにも、変わらず従者のような態度のイスワド。どんなにサハルが男娼として扱えと言っても、イスワドは優しくサハルを扱います。
＜感想＞
アラブのクーデターに巻き込まれた元王子と、その元凶となった従者とのお話で、長年の両片想いが成就する瞬間が拝めました。元は王子とはいえ、ずっと軟禁状態だったらしいサハルは男娼となってからも強かに生きていてたくましいです。
サハルのお客さんとイスワドを交えての絡みシーンなんかはほぼ３P。ですが客といっても将軍のハーディとサハルとは軽口をたたける仲のようなので、むしろ細かい性癖をつつかれるような萌が詰まっていました。
サハルが娼館で働くようになってからは数年経っていて、「アビヤ」は立派な稼ぎ頭。お客さんとのことは仕事と割り切り上手くあしらえるのに、傍にイスワドがいるだけでハーディに抱かれて乱れてしまうサハルがかわいいです（もちろんイスワドと二人きりの時の方が幸せいっぱいなのですが）。
描き下ろしではその後のふたりの暮らしが見られました。色の対比が綺麗で、改めて白いレイヨウとバイコーンの組み合わせって素敵だなあと感じながら何度も眺めています。
『伏見せんせいは頭が痛い』
＜登場人物＞
灰兎（かいと）…ウサギのオス。生徒。
伏見（ふしみ）…キツネ。保健室の先生。
＜あらすじ＞
「ケモノ」を原種とした世界の学校で、保健室の先生をしている伏見。ウサギ組が発情期を迎え、抑制剤の効きにくい生徒・灰兎の様子を見ていた伏見は、学生時代の「彼」のことを思い出していました。
＜感想＞
伏見先生にも苦い過去があって、でもそれが今の優しさに繋がっているのかと考えると不思議といい話を読んだなあという気持ちになります。
最初は伏見先生が思い出の「彼」と再会するのかな、と思っていたら、まさか灰兎くんが未来のお相手とは。ものすごく見たいので灰兎くんにはぜひともがんばっていただきたいです。
『αくん、いじわるしないで たぬき（α）ときつね（Ω）の溺愛オメガバース』
＜登場人物＞
（攻）黒輪猯也（くろわ まみや）…α。成金狸。ひとり暮らし。
（受）稲成巫人（いなり みこと）…Ω。由緒正しい天狐の本家。
＜あらすじ＞
由緒正しい天狐の家に生まれた巫人と、成り上がりの狸の家に生まれた猯也は幼馴染ですが、学校では猯也を警戒してばかりの巫人。巫人が名家のΩであるためにひどい扱いを受けているのを知った猯也は、証拠を押さえて巫人に知らせますが……。
＜感想＞
タヌキとキツネのかわいいオメガバースでした。Ωの巫人が分家の人と絡まなければならなかったりとかわいそうなシーンもありますが、「ケモノ」な世界観のおかげかだいぶマイルドに感じられます。
そしてキツネの巫人がものすごくかわいい。これは泣かせたくなる猯也の気持ちの方に頷いてしまいます。ふわっふわのしっぽを揺らしながらウサギのぬいぐるみを大事にしている巫人……誘拐されそうだなと私も思いました。いかにも狡賢そうな黒輪パパもキャラが濃くて忘れられません。
『金の林檎 銀の蛇』
＜登場人物＞
（攻）レヴィアタン…α。悪魔。
（受）ラキ…Ω。レヴィアの息子。
＜あらすじ＞
父親で悪魔のレヴィアに想いを寄せているラキは、父親そっくりの人間と関係を持ち発情期をやり過ごしていました。そんなとき、ラキはレヴィアから番を作るようにと候補まで選ばれてしまいます。
＜感想＞
悪魔オメガバース、１話完結で少しのネタバレも躊躇してしまうくらい作りこまれたストーリーでおもしろかったです。ラキのお友達のカラスさんがすんごくかわいい。ふわもこ。
さっそくネタバレになってしまいますが、翼と蛇触手ってかなり見応えがありました（これだけは言いたかった）。最後はまるで絵画のようで、いつまでも眺めていたいシーンです。
＜オススメ要素＞
・ケモノ系短編集。
＜関連作品＞
・電子書籍（お試し読みができます。）
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