<登場人物>
(攻)三雲高虎(みくも たかとら)…隼瀬浦の領主の息子。戦場では「鬼神」と呼ばれるほど強い。
(受)空良(そら)…伊久琵で領主の息子として生まれたが、父に疎まれ姉の身代わりとして嫁に出された。故郷では捨(すて)と呼ばれている。16歳。
<あらすじ>
領主の息子として生まれたものの、難産だったために母が亡くなってしまい父に疎まれてしまった捨。馬小屋での生活を強いられてきましたが、16になって姉の身代わりとして新興の小国・隼瀬浦に嫁ぐことになります。
身代わりであることが知れても優しく捨を受け入れてくれた高虎。捨は高虎に「空良」という名をもらい、嫁として懸命に尽くします。
<感想>
びっくりするくらい不憫な境遇で育ったのに、純粋すぎて自身の不幸を認識していなかったために捻くれることなく16まで育った空良。空良という名前も後に高虎から付けてもらったもので、故郷では捨と呼ばれていました。空良の無垢な視点で淡々と語られるためにそれほど悲惨な雰囲気ではないものの、かわいそうなものはやっぱりかわいそうです。
そんな空良は姉の身代わりとして殺される覚悟で高虎のところに嫁いできますが、これまたとんでもなくいい人だった高虎が本当に嫁にしてくれます。高虎は、当然反対してきた周囲を宥め、空良を守ってくれた誠実で強くて優しい攻です。
どこまでも健気な受と頼れる攻の組み合わせで、ふたりの関係自体はゆっくりと危なげなく進みます。しかし、戦の多い時代が中睦まじい夫婦を翻弄してきます。自分を救ってくれた高虎の家のため、空良が身を挺する姿に胸を打たれました。
そして本当に涙が止まらなかったのはその後でした。なんとかして空良を引きとめようとする高虎の姿と、声に出さずにそれに答える空良のシーンがもう。これからの幸せへの執着を生ませることで命を繋ぎとめる……、それってなんて美しいのだろうと感動しきりでした。
空良が高虎のもとにきてからの個性的な脇キャラたちもとてもよかったです。私は次郎丸と魁傑の将来が楽しみでなりません。
先生のあとがきにある通り「昔々のおとぎ話」という言葉がぴったりな、とてもいいお話でした。
<オススメ>
・不憫受が強くて優しい攻に出会って幸福になる、いいおとぎ話。
<関連作品>
・電子書籍(お試し読みができます。)
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・続編
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