彼は優しい雨 水原とほる(著)/小山田あみ(イラスト) 【小説感想】

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<登場人物>

 (攻)久富周一郎(ひさとみ しゅういちろう)…大学講師。東欧文学を研究。39歳。

 (受)峯浦文彦(みねうら あやひこ)…若手デザイナー。29歳。


<あらすじ>

 デザイナーをしている文彦は、職場の近くの大学で昼食をとったはいいものの、戻ろうとしたところで突然の雨に降られてしまいます。時間を潰すためにふらりと立ち寄った講義室。そこで淡々と授業をする大学講師・久富と、彼の専門である東欧文学について興味を持ちます。
 学生に紛れてこっそり講義に通うようになった文彦は、久富と交流を持つようになり……。


<感想>

 それなりに経験を積んできた大人同士がゆっくりじっくり恋愛関係を作っていく様子が丁寧に綴られているお話でした。研究に一途な大学講師と時代の先端を行く若手デザイナーという組み合わせのためか、二人の作る雰囲気はどこか浮世離れしているように思えます。現実から少しだけ離れた次元を感じさせる図書館や大学の研究室での逢瀬がロマンチックでした。

 ふたりの関係が進むにつれて互いの呼び方も変わっていくのですが、途中の「君」、「先生」呼びがツボでした。どちらも大人の男とはいえ、十も離れた年上講師と年下の青年っぽさが一番感じられて大変萌えました。

 それから文彦について、「詩人のランボーに似ている」と評されるところが大変気に入っています。ランボーについては私自身がそれこそ単位目当ての授業で聞きかじった程度で大した知識があるわけではないのですが、本人の自覚なく年上の男を惑わせる魔性の天才美青年……文彦をイメージするのにぴったりでした。

 文彦が現代のランボーなら、それだけで久富が文彦に夢中になったのも孝也が文彦に狂わされたのにも頷けます。文彦の目にとまってしまったが最後、魔性の年下に誘われたら落ちない男はいないのではないでしょうか。

 最初はいかにも研究一筋なもっさり講師という印象だった久富も、文彦といる間は人生経験の豊かな大人の男という感じがして頼もしかったです。マイナーな分野とはいえ東欧文学の第一人者、本人が謙虚なだけで本当はすごい人なんですよね。そんな人が雨男を自称しているというのもなんだかかわいかったです。

 大人たちの優しく穏やかなお話で、思いがけずキャラとシチュエーション萌もいただけた、私にとっては貴重な作品となりました。


<オススメ要素>

・年上の大学講師×ランボー似の年下美青年。


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