神の落淫―黒豹国主と新たな神― 沙野風結子(著)/Ciel(イラスト) 【小説感想】
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<登場人物>
(攻)リイド=シュラハ…ガラの国主。「黒豹国主」を呼ばれ恐れられている。
(受)タキ…輝土人。ガラの楼閣で下働きをしている。
<あらすじ>
女郎の頂点にいる者が「神」として民を跪かせている商業国・ガラ。しかし、神に選ばれた者は皆数年のうちに命を落としてしまいます。
姉・ユキノが次の神となることが決まり、楼閣で下働きをしていたタキは責任を感じていました。そんなとき、ユキノが恋人と心中を図ろうとしているのを知ったタキは、ユキノを逃がし、自分が身代わりに国主のもとへと連れていかれます。
<感想>
『神の飼育―真白き神の恋―』の続編です。「神制度」によって支えられている輝土・ガラ・ノイエの3つの国のうち、今回は商業国ガラが舞台です。
輝土がメインだった前作と比べると、今回のガラは温暖な気候で享楽的な商業国のため比較的緩やかな雰囲気。それが伝わってくる文章も大変読みやすい印象です。この世界や神制度については前作のほうが詳細な説明がありますが、今作だけでも十分わかりやすく楽しめる内容だったと思います。
姉の代わりに神となるため、国主・リイドのいる城へと連れていかれたタキ。制度の実態を知らないながらも立派な神になろうとする姿は健気そのものです。黒豹国主として恐れられているリイドも、次第に絆されていきます。
健気なタキと、実は話の通じる相手だったリイド、ふたりが心を通わせるまでが前半のお話。もしそこまでで終わっていたとしても、いい健気受だった……と満足して本を閉じていたと思います。しかし、後半に怒涛の展開が待っていました。タキの身にふりかかる事態がもうとんでもなく悲惨で……。リイドと気持ちを通わせた直後がとても甘かっただけに、そこからじわじわと引きずり落とされていく様子には目を覆いたくなるほどでした。
そして悲劇の一端を担っているのが、シリーズ裏ヒロインである触手さん。今回は頑張りすぎてリイドに刃を向けられてしまいました。ここについては先生のあとがきでも触れられていて、くすりと笑いつつ、ですよね、と勝手に共感していました。触手さんの今後の活躍も大いに期待しています。
タキとリイドが立ち向かった苦境はかなりつらいものがありましたが、それを乗り越える過程で輝土が関わってきていました。協力者としてほんの少し登場した人物に大喜びしつつもちょっと切なくなったり。感情をあっちこっちに揺さぶられて忙しかったです。
残るは「神制度」に尋常ならぬ固執がうかがえるノイエ。次回が完結編とのことで、今からとても楽しみです。
<オススメ要素>
・健気不憫受を襲う怒涛の悲劇。
・触手大活躍。
<関連作品>
・シリーズ
(感想記事はこちらです)
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