小説の登場人物と恋は成立するか? 水原とほる(著)/サマミヤアカザ(イラスト) 【小説感想】

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<登場人物>

 (攻)水口(みずぐち)…一彬の小説に登場する「ミヅチ」にそっくりな、謎だらけのの人物。

 (受)小柴一彬(こしば かずあき)…医薬品メーカーの研究員。ブログで小説を連載している。30歳。


<あらすじ>

 老舗医薬品メーカーに勤める一彬は、趣味のブログで小説「ミヅチ奇譚録」を連載中。謎多き探偵ミヅチが事件を解決していく物語ですが、ある日一彬がカフェで小説を書いているとき、ミヅチそっくりの男がカウンターにいるのを発見します。


<感想>

 院卒後は研究室勤めでコミュ障の自覚のある一彬ですが、ブログで趣味の小説を連載していて、なかなかに人気があるようです。物語の主人公「ミヅチ」は一彬が自分の理想を詰め込んだというだけあって、謎が多くもとても魅力的なキャラクターなのが伝わってきます。

 そんなミヅチそっくりな人物が現実に現れたというから大変です。あまりのできごとに興奮を抑えられない一彬の視点で語られるため、これははたしてファンタジーなのか、それともミステリーなのか、もしかしてオカルトだったり?と、お話が一体どこに着地するのかさっぱりわからずに先を知りたい気持ちがはやり、読んでいる間はずっとフワフワした心地でおもしろかったです。

 サマミヤアカザ先生がイラストというのも、読み手を翻弄するのにぴったりだったのではないでしょうか。ふわっとした空気感がいい意味で現実を感じさせず、一彬のロマンチック思考を見せてもらっているような気分になれました。

 ミヅチこと水口の素性は終盤までわからないままながら、一彬は彼に惹かれ恋については順調に進みます。同時に怪しい、というか変わった人たちも登場してきて、中でも私は愛崎さんが強烈に印象に残りました。彼女もまた対人関係は苦手なようで、一彬とのやりとりはもう見ていられない……というのも、コミュ障同士のギクシャクした感じがどうにも自分を見ているようで赤面してしまったのです。これは完全に私個人の問題でした。私は愛崎さんを応援しています。

一彬の危なっかしい思考だったり物語の帰着点だったりには人によって感じ方が変わってきそうで、読み終わった後にはとにかく他の方の感想を聞いてみたくなりました。この本を読んでどう思ったか、共感でなくとも構わないのでとにかく教えてくださいと念じております。


<オススメ要素>

・小説の登場人物に瓜二つな謎の男×小説の作者。


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